曲技飛行

曲技飛行 (Aerobatics)

曲技飛行とは、航空機が普通とは異なる特別な飛行技術を駆使して行う一連の演技のことを指します。この技術は観客を魅了するための航空ショー形式や、その技術を競い合う競技形式に分かれています。曲技飛行の英語表現「aerobatics」は、「空中」を意味する「aero」と「アクロバット」を意味する「acrobatics」から成る言葉です。

歴史

曲技飛行の起源は第一次世界大戦後の複葉機の時代にさかのぼります。この時期には、軍での空中戦に従事していたパイロットたちが戦後の失業状態を利用して、彼らの技術を活かした曲芸を各地で披露し始めました。これにより、曲技飛行は欧米を中心に広まり、多くの著名な飛行隊が形成されるようになりました。かつては、飛行中に隣の機体に飛び移る「ウィングウォーク」も行われていましたが、現在では翼に身体を固定して演技するスタイルが主流です。

日本においても、航空法で曲技飛行は第91条に規定されています。

訓練

曲技飛行は全ての操縦士に必須の技術ではないため、一般的な試験の中では曲技のトレーニングは行われません。しかし多くの国の軍隊では、操作の安定性を確保するための基本的な曲技訓練を行っています。特にアメリカでは、既に操縦資格を取得している者を対象にした曲技飛行の専門学校が多数存在し、優れたパイロットが教育に当たっています。

曲技の種類

曲技飛行には様々な種目があります。例えば、

• - ハンマーヘッド (Hammer Head): 垂直に上昇し、静止した後に横向きで失速反転します。
• - テールスライド (Tail Slide): 垂直上昇からバックしU字軌道を描いて降下します。
• - キューバンエイト (Cuban Eight): 8の字を描くように飛行します。
• - ナイフエッジ (Knife Edge): 90度傾いた姿勢で水平移動をします。

以上のような動きをを分類するために、エアロバティック・マニューバという呼称が使われます。これらの技は、Aresti Catalogというシンボルで記録され、パイロット同士のコミュニケーションや事前の計画に役立てられています。

曲技機

曲技飛行に使用される航空機は通常「曲技機」と呼ばれ、特に軽量で特殊な設計がなされています。機体は逆T字尾翼を採用し、頻繁な背面飛行を考慮して対称翼が一般的です。強力なエンジンを搭載しており、瞬時の垂直上昇が可能です。飛行機は、燃費が劣るものの軽量性によってパフォーマンスを維持しています。ただし、冷暖房などの快適さが欠け、長時間の飛行には向いていません。

グライダー

グライダーも曲技飛行の一形態であり、高度な飛行技術が求められます。特に、大きな空間で曲技を行うため、飛行機による牽引が必要とされます。

競技

曲技飛行には多くの大会が存在しており、FAI曲技飛行世界選手権や特定の地域での選手権が定期的に開催されています。これにより、パイロットたちが技を競い合い、技術を磨いています。

曲技飛行は、ただのスポーツではなく、技術と芸術が融合した魅力的な世界です。

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