スルピス (聖人)

敬虔なスルピス（Sulpice le Pieux）は、6世紀後半に現在のフランス、アキテーヌ地方に位置するブールジュ司教区内のバタンと呼ばれる地域で、貴族の家系に生まれました。

幼少期には王宮付属の学校で教育を受け、知性と敬虔さを培いました。成人後、教会の道へと進み、618年には当時のブールジュ司教であったオーストレージュジル師の手により、晴れて司祭に叙階されます。その後、教会内での役割を深め、助祭としても奉仕しました。

その卓越した資質は王宮でも認められ、フランク王国の国王クロタール2世（在位613年-629年）によって宮廷のチャプレン、すなわち王の精神的な顧問として任命されました。王の信頼を得て宮廷で活動する一方で、彼は教会の職務も忠実に果たしました。

624年に前任者のオーストレージュジル司教が死去すると、敬虔なスルピスはその後任としてブールジュの司教に選出されました。司教としての任期中、彼は特に二つの側面に力を注ぎました。一つは、社会的に弱い立場にあった貧しい人々への手厚い世話と支援です。もう一つは、教会内部の規律の立て直しと、当時のコミュニティに暮らしていたユダヤ人のキリスト教への改宗活動でした。彼はこれらの活動を通して、教会の精神的な権威と社会における役割の向上に努めました。

教会会議にも積極的に参加し、その運営を支援しました。626年に開催された重要なクリシー教会会議の開催を後押ししたことは特筆されます。また、自身が管轄するブールジュ管区の司教たちを率いて、他の幾つかの教会会議を主導し、教会の秩序維持と教義の確立に貢献しました。

晩年に入ると、高齢のためか、あるいは他の活動に専念するためか、司教としての職務を代行・補佐する人物（補佐司教など）を任命しました。そして、ブールジュの近郊に彼自身が設立したと伝えられる修道院へと隠棲しました。彼はそこで静かな余生を送り、646年1月17日に安らかにその生涯を終えました。

死後、敬虔なスルピスはその生涯の功績と聖人としての徳を認められ、カトリック教会によって列聖されました。現在も多くの人々に崇敬されています。フランス、パリに立つ著名な教会建築であるサン＝シュルピス教会（サン・シュルピス教会）は、この聖スルピスに捧げられた教会として知られています。さらに、17世紀の1642年には、ジャン・ジャック・オリエによって、彼の名を冠した「聖スルピス会」という司祭団が設立されました。

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