スレイヴス・アンド・マスターズ

ディープ・パープル『スレイヴス・アンド・マスターズ』：第六期の光と影

1990年に発表された『スレイヴス・アンド・マスターズ』は、ディープ・パープルの通算13作目のスタジオ・アルバムであり、再結成後としては3作目にあたります。しかし、このアルバムは、数あるディープ・パープルの作品の中でも、特異な位置を占めています。それは、元レインボーのジョー・リン・ターナーがボーカルとして参加した唯一のアルバムであるからです。

イアン・ギラン解雇からジョー・リン・ターナー加入まで

1984年に第2期のメンバーで再結成されたディープ・パープルでしたが、1989年にはイアン・ギランが解雇されます。後任としてサバイバーのジミ・ジェイミソンに声がかかりますが、マネージメント側の都合で実現しませんでした。その後、オーディションでテリー・ブロックが選ばれますが、正式加入には至らず、最終的にジョー・リン・ターナーが加入することになります。

アルバムの内容と評価

アルバムには、「キング・オブ・ドリームス」「ザ・カット・ランズ・ディープ」「ファイア・イン・ザ・ベースメント」「ラヴ・コンクァーズ・オール」など、全9曲が収録されています。楽曲は、ハードロックと産業ロックの要素が混ざり合った、メロディアスなサウンドが特徴です。

しかし、評価は賛否両論でした。イギリスでは、再結成後の前2作ほどの成功を収めることができず、全英アルバムチャートのトップ10入りを逃しました。アメリカでは、Billboard 200で87位に達しましたが、ディープ・パープルにとって、本作が最後の全米アルバムチャートのトップ100入りとなりました。

シングル・カットされた「キング・オブ・ドリームス」は全英70位、「ラヴ・コンクァーズ・オール」は全英57位を記録しました。アメリカのメインストリーム・ロック・チャートでは、「キング・オブ・ドリームス」が6位、「ファイア・イン・ザ・ベースメント」が20位に達しています。

短命に終わった第6期

アルバム発表後、ディープ・パープルはツアーを行いますが、結成25周年を記念する新作の制作に取り掛かる頃には、メンバー間の不協和音が生じ始めます。音楽性の違いや人間関係の悪化が表面化し、ターナーは制作終了を待たずに1992年に脱退。こうして、第6期ディープ・パープルは、本作『スレイヴス・アンド・マスターズ』のみを残して終焉を迎えることになりました。

その後

ターナーは、元ディープ・パープルのグレン・ヒューズとヒューズ/ターナーを結成し、ライヴで「キング・オブ・ドリームス」を披露しています。その音源は、ライヴ・アルバム『ライヴ・イン・トーキョー』に収録されています。

『スレイヴス・アンド・マスターズ』は、ディープ・パープルの歴史において、過渡期を象徴する作品と言えるでしょう。ジョー・リン・ターナーという異質なボーカリストを迎え、新たな音楽性を模索したものの、結果的には成功を収めることができませんでした。しかし、その挑戦があったからこそ、ディープ・パープルはその後も進化を続けることができたのかもしれません。

このアルバムは、ディープ・パープルのファンにとって、聴く人によって評価が分かれる作品です。しかし、その音楽的な実験性や、ジョー・リン・ターナーの歌唱力は、聴く価値があると言えるでしょう。

本記事は、アルバム『スレイヴス・アンド・マスターズ』に関する情報をまとめたものです。詳細については、各出典をご参照ください。

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