スロベニアの地方行政区画

スロベニアの地方行政区分：歴史と統計の二面性

スロベニアの地方行政区分は、歴史的な背景と現代の行政ニーズを反映した複雑な様相を呈しています。大きく分けて、歴史的に形成された伝統的な地方と、統計および行政目的のために制定された統計上の地方の二種類が存在します。

1. 伝統的な地方

スロベニアには、古くから続く7つの伝統的な地方があります。これらの地方は、住民のアイデンティティや文化、方言、歴史的な出来事などによって形成され、地域住民にとって強い帰属意識の対象となっています。しかし、行政区画としては法的効力を持たず、あくまでも歴史的、文化的地域区分としての性格が強い点が重要です。日本の東北地方や関東地方のような位置づけです。

具体的には、以下の7つの地方があります。

プリモルスカ地方（海岸地方）：アドリア海沿岸部に位置し、地中海性気候の影響を受ける地域です。
クラニスカ地方：スロベニアの中央部に位置し、歴史的に重要な地域です。この地方はさらに3つの小地方に細分されます。
ゴレンスカ地方（高地）
ノトランスカ地方
ドレンスカ地方（低地）：ドレンスカ地方にはベラ・クライナ地方も含まれます。
コロシュカ地方（ケルンテン）：オーストリアとの国境付近に位置する地域です。
シュタイエルスカ地方（シュタイアーマルク）：オーストリアとの国境付近に位置する地域で、豊かな自然と農業が特徴です。
プレクムリェ地方（ムラメンテ）：ハンガリーとの国境付近に位置し、独自の文化を持つ地域です。

2. 統計上の地方

一方、スロベニアは統計および行政目的のために、12の「統計上の地方」に分割されています。これは2000年に制定され、欧州連合の地域統計分類単位NUTS3に相当する区分です。統計上の地方は、公式統計の作成や地域計画、行政運営において重要な役割を果たしています。従来、広域の地方区分としては「伝統的な地方」が用いられてきましたが、より精緻な統計分析や行政効率の向上を目的として、「統計上の地方」に置き換えられました。

12の統計上の地方は以下の通りです。

上カルニオラ地方
ゴリシュカ地方
南東スロベニア地方
コロシュカ地方
プリモルスカ＝内カルニオラ地方
沿岸カルスト地方
中央スロベニア地方
ドラヴァ地方
ムラ地方
サヴィニャ地方
下サヴァ地方
中央サヴァ地方

3. 市町村

スロベニアには212の市（自治体、občina）が存在します。そのうち、特に人口の多い11の市は、日本の政令指定都市に相当する特別の地位を有しています。これらの市は、地方行政の中核として重要な役割を果たしています。

まとめ

スロベニアの地方行政区分は、歴史的地域区分と統計的地域区分の二つの側面から成り立っており、それぞれ異なる目的と機能を担っています。歴史的地域は、住民のアイデンティティや文化を反映した区分である一方、統計的地域は、現代の行政ニーズに応じた効率的な行政運営を支えるための区分です。これらの区分を理解することで、スロベニアの社会や文化、政治の複雑な様相をより深く理解することができるでしょう。

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