地域統計分類単位

NUTS：欧州連合の地域統計分類単位

欧州連合（EU）では、統計データの収集・分析を統一的に行うため、地域統計分類単位（NUTS：Nomenclature of Territorial Units for Statistics）という標準規格を採用しています。NUTSは、EU加盟国の地域を人口規模に基づいて階層的に分類し、統計処理を効率化する役割を担っています。

NUTSのレベルと人口規模

NUTSは、NUTS 1、NUTS 2、NUTS 3の3つのレベルで構成されています。それぞれのレベルには、目安となる人口規模が設定されていますが、必ずしも厳格に適用されているわけではありません。実際には、歴史的経緯や行政区分などを考慮して柔軟に設定されているケースも多く見られます。

NUTS 1（第一種地域統計分類単位）: 人口300万～700万人規模
NUTS 2（第二種地域統計分類単位）: 人口80万～300万人規模
* NUTS 3（第三種地域統計分類単位）: 人口15万～80万人規模

例えば、人口の少ない国では、上位レベルの区画が設定されない場合もあります。キプロスやルクセンブルクのように、一国がNUTS 3レベルの一つの区画となるケースも見られます。逆に、人口規模の目安を大きく上回る地域も存在します。

NUTSコード

各NUTSレベルの地域には、固有のコードが割り当てられています。コードは、ISO 3166-1の2文字の国名コード（イギリスはUK）に、レベルを示す1文字（数字またはアルファベット大文字）を付加した形式となっています。例えば、ドイツのヘッセン州は「DE7」、ダルムシュタット行政管区は「DE71」、オーデンヴァルト郡は「DE71B」といった具合です。

EU加盟国以外の地域についても、2レベルのコードが設定されています。大陸を示すアルファベット2文字と、国名を示す数字2文字で構成され、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアについては、州ごとにコードが割り当てられています。ただし、ジブラルタルやフランス領ギアナのように、例外的なコード割り当てが行われている地域もあります。

NUTSとEU政策

NUTSは、EUの地域政策において重要な役割を果たしています。特に、地域間格差の是正を目的とした構造基金（Structural Funds）の配分において、NUTSによる地域分類が基準として用いられています。NUTSによる分類は、地域経済の現状把握や政策効果の測定にも活用されています。

NUTSの歴史と法的地位

NUTSは、1970年代からユーロスタット（EU統計局）が統計目的で使用してきました。当初は「紳士協定」に基づいて運用されていましたが、2003年に規則(EU) No 1059/2003が採択され、法的な根拠が明確化されました。その後も、規則(EU) No 31/2011などによって、規則の見直しや更新が行われています。NUTSは、少なくとも制定後3年間は同一性を保つことが定められており、その後、欧州委員会によって区画の見直しが実施されます。

関連規格

NUTSは、ISO 3166-1などの国際標準規格や、アメリカのFIPS 10-4規格と、ある程度同様の区分を行っています。かつてはNUTS 4、NUTS 5といったレベルもありましたが、現在は廃止され、Local administrative unit（LAU）という2つのレベル（LAU 1、LAU 2）に置き換えられています。

まとめ

NUTSは、EU加盟国の地域を統計的に分類するための標準規格であり、EUの地域政策や統計分析に欠かせない存在です。人口規模を基準とした3レベルの階層構造、体系的なコード体系、そして法的な根拠を持つNUTSは、EU域内の統計データの整合性を確保し、地域間格差是正のための政策立案に貢献しています。今後、EUの統合や地域経済の変化に合わせて、NUTSの分類体系も継続的に見直されていくと考えられます。

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