スヴォボードヌイ宇宙基地

スヴォボードヌイ宇宙基地（ロシア語: Космодром Свободный）は、ロシア連邦極東部に位置したロケット打ち上げ施設です。アムール州の都市スヴォボードヌイの北方に所在し、地理的には北緯51度42分、東経128度00分に位置していました。この施設は1996年に開設され、2007年にその役目を終えるまで、ロシアの宇宙活動の一端を担いました。

スヴォボードヌイ宇宙基地のルーツは、大陸間弾道ミサイル（ICBM）の発射施設として建設されたことに遡ります。ソビエト連邦の崩壊後、主要な宇宙基地であったバイコヌールがカザフスタンの領土となったため、ロシアは自国領内に新たな主力宇宙港を持つ必要に迫られました。その代替候補として、このスヴォボードヌイの施設を拡張・整備する計画が持ち上がります。当初の構想では、バイコヌールに匹敵する大規模な宇宙港とする予定でしたが、経済的な困難に直面し、想定されていたような全面的な整備計画は断念されました。

計画変更の後、スヴォボードヌイは比較的小規模なロケットの打ち上げに用いられることになります。1997年から、主に退役したICBMを転用した小型衛星打ち上げ用ロケット、スタールト1の打ち上げがここから実施されました。また、UR-100N（NATOコードネーム：SS-19）という別のICBMを改造したロコットロケットの打ち上げにも対応できるよう、施設の一部が改修されました。しかし、実際にスヴォボードヌイから打ち上げられたロケットは、スタールト1が合計5回のみに留まりました。これは、大規模な宇宙港としての利用が実現しなかったこと、そして後述するバイコヌール基地の状況変化などが影響しています。

スヴォボードヌイ宇宙基地の運用期間は比較的短いものでした。2005年に、かつての主力であったカザフスタンのバイコヌール宇宙基地が大規模な改修を経て近代化されたことを受け、ロシア連邦宇宙局は国内に第二の主要な宇宙施設を維持する必要はないと判断します。この決定に基づき、スヴォボードヌイ宇宙基地は2007年に公式に閉鎖され、ロケット打ち上げ施設としての歴史に幕を下ろしました。

スヴォボードヌイ宇宙基地が閉鎖された後、その跡地は新たな国家プロジェクトの舞台となります。ロシアは改めて、カザフスタンへの依存度を減らし、完全に自国の領土内にある主要な宇宙基地を確保するため、スヴォボードヌイの跡地にボストチヌイ宇宙基地（Vostochny Cosmodrome）を建設することを決定しました。建設作業は2011年1月に開始され、同年8月1日には一部施設が開設されました。そして、2016年4月28日には、ボストチヌイ宇宙基地から初めてのロケット打ち上げが成功し、新たなロシアの主力宇宙港として本格的な運用が始まっています。スヴォボードヌイ宇宙基地の歴史は短かったものの、その場所はロシアの宇宙開発における重要な転換点、すなわちボストチヌイ宇宙基地の誕生へと繋がる地となったのです。

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