スートラ〜教典

『スートラ〜教典』（原題：Sutras）は、イギリスのシンガーソングライター、ドノヴァンが1996年に発表したスタジオ・アルバムです。新曲のみで構成されたアルバムとしては、実に12年ぶりのリリースとなりました。

制作の背景

ドノヴァンは、著名な音楽プロデューサー、リック・ルービンが主宰するアメリカン・レコーディングスと契約。ルービンのプロデュースのもと、2年以上の歳月をかけて本作を完成させました。ドノヴァンは当時、「リック・ルービンは同志だと感じた。彼の書斎で、僕が最近手に入れたニューエイジ系の本を彼も読んでいたんだ」と語っています。この言葉から、二人の間に精神的な繋がりがあったことが伺えます。

レコーディングには、ダニー・トンプソン（元ペンタングル）、スティーヴ・フェローン、ベンモント・テンチ（トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ）といったベテラン勢に加え、デイヴ・ナヴァロ（ジェーンズ・アディクション〜レッド・ホット・チリ・ペッパーズ）や、ジョニー・ポロンスキーといったアメリカン・レコーディングス所属の若手ミュージシャンも参加し、幅広い世代の才能が集結しました。

「黄金郷 (Eldorado)」は、エドガー・アラン・ポーの同名の詩を引用した楽曲で、ナイジェル・ケネディがアレンジとヴァイオリン演奏で参加。クラシック音楽の要素が加わり、楽曲に深みを与えています。

評価と影響

セールス面では大きな成功を収めることはできず、全英アルバムチャート、Billboard 200ともにチャートインを逃しました。しかし、音楽評論家からは一定の評価を得ています。

Stephen Thomas Erlewineはオールミュージックにおいて、5点満点中3点を付け、「彼の有名曲に見られたサイケデリック・ポップの要素を捨て、初期のレコードのアコースティック・フォーク色を押し出している。ドノヴァンのソングライティングには多少ムラがあるものの、温かみのあるパフォーマンスは、特に長年のファンにとって魅力的で歓迎されるだろう」と評しました。

収録曲について

特筆すべき点として、アメリカ盤CDは14曲入りですが、日本盤CD(FHCA-1001)には「ガーデン」が追加収録されています。

また、日本盤の日本語対訳歌詞、及び対訳タイトルは「王様」が担当しており、訳者のイメージ通りに「対訳歌詞でそのままメロディーに乗せて歌える」仕様になっています。これにより、日本のファンはドノヴァンの楽曲をより深く理解し、親しむことができるでしょう。

収録曲には、老子の著書やサッポーの詩からの引用を含む楽曲もあり、ドノヴァンの精神世界や文学への造詣の深さが伺えます。また、スコットランド・ゲール語の伝統的な祈祷を元にした楽曲「深い平和」など、多様な文化からの影響も感じられます。

参加ミュージシャン

ドノヴァン - ボーカル、アコースティック・ギター、ハーモニカ、ハーモニウム
ベンモント・テンチ - キーボード(on #2, #3, #8, #11, #12)
[デイヴ・ナヴァロ]] - メロトロン]、バッキング・ボーカル(on #4, #7, #9)、[エレクトリック[[ピアノ]、エレクトリック・[シタール]、[ピアノ]、キーボード(on #13)、チェンバレン(on #14)
ダニー・トンプソン - アコースティック・ベース(on #1, #2, #6, #13, #14, #15)
ジョシュ・ヘイデン - ベース(on #3, #9, #11)
ジョニー・ポロンスキー - ベース(on #7)
エヴァン・ハーツェル - ドラムス(on #3)
スティーヴ・フェローン - [パーカッション]、ドラムス(on #7, #9, #11, #13, #14)
ジュリエット・プレイター - [パーカッション]
D・サーディ - ベル(on #5)
ナイジェル・ケネディ - [ヴァイオリン]
Michael Severens - [チェロ]
Gerri Sutyak - [チェロ]
Pavinder Singh - [タブラ]

もう一度検索