リック・ルービン

リック・ルービン：音楽界の巨匠、その足跡と影響

リック・ルービン（Rick Rubin、1963年3月10日 - ）は、アメリカ合衆国出身の音楽プロデューサーであり、レコードレーベル経営者です。彼はアメリカン・レコーディングスとデフ・ジャム・レコードの創始者として知られ、後年にはコロムビア・レコードの共同社長も務めました。

ヒップホップをメジャーへ

ルービンの名は、ビースティ・ボーイズやRun-D.M.C.のプロデュースを通して、ヒップホップをメジャーシーンに押し上げた功績と深く結びついています。彼の革新的なアプローチは、音楽のジャンルを超えて多大な影響を与えました。

多岐にわたるプロデュースワーク

ルービンがこれまでに手掛けたアーティストは、実に多岐にわたります。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、スレイヤー、メタリカ、システム・オブ・ア・ダウンといったロックバンドから、ジョニー・キャッシュやアデルなどのシンガーソングライターまで、幅広いジャンルの音楽家たちと協働しています。

2007年には、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出され、MTVからは「過去20年間で最も重要なプロデューサー」と評されました。

生い立ちとキャリア

ニューヨーク州ロングアイランド南部で、ユダヤ系アメリカ人の家庭に生まれました。ニューヨーク大学在学中の1984年にデフ・ジャム・レコードを設立し、LL・クール・Jやビースティ・ボーイズのシングルをリリースしました。1986年にはRun-D.M.C.とエアロスミスのコラボレーション『ウォーク・ディス・ウェイ』を実現させ、ヒップホップとロックの融合を成功させました。

1988年にデフ・ジャムを脱退後、ロサンゼルスに移住し、新たにデフ・アメリカン（後のアメリカン・レコーディングス）を設立。この頃からロックバンドのプロデュースを手掛けるようになり、スレイヤーの『レイン・イン・ブラッド』や、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』などを制作しました。1994年にはジョニー・キャッシュのアルバム『アメリカン・レコーディングス』をプロデュースし、新たな音楽の可能性を切り開きました。

アメリカン・レコーディングスからのリリース作品以外にも、ミック・ジャガー、AC/DC|AC_DC、メタリカなどの作品をプロデュース。ウィリー・ネルソン、ニール・ダイアモンド、ドノヴァンといった、60年代から70年代に活躍したフォーク、カントリーのアーティストのプロデュースにも積極的に関わりました。

2007年5月には、コロムビア・レコードの共同社長に就任（2012年に辞任）。2012年には、彼がプロデュースしたアデルのアルバム『21』がグラミー賞最優秀アルバムを受賞しました。

プロデューサーとしての姿勢

ルービンはサウンドとアレンジに徹底的にこだわる一方で、アーティストに対しては寛大な姿勢で接し、その人柄で多くの人々から慕われています。ディクシー・チックスのナタリー・メインズは、ルービンが音楽を意識的に作り出すのではなく、自然な形で生まれるのを待つ忍耐強さを持っていると語り、彼を「グル（導師）」のような存在だと評しました。

スタジオでの作業に常に立ち会うタイプのプロデューサーではなく、多忙のため席を外していることも少なくありません。スレイヤーのケリー・キングは、この点を認めています。スリップノットのコリィ・テイラーは、ルービンがプロデュースした『Vol. 3』の制作時を振り返り、「彼とはレコーディング中に4回ほどしか会わなかった」と語り、ボーカル録りの際に何もしてくれなかったと不満を述べました。

多くのアーティストから支持される一方で、ルービンのスタイルに合わなかったミュージシャンも存在します。U2、ミューズ、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーなどは、アルバムの制作途中でルービンとの協働を打ち切っています。

リック・ルービンの音楽に対する深い愛情と、ジャンルを超えた幅広い知識、そしてアーティストの個性を尊重する姿勢が、彼を音楽史に残る名プロデューサーたらしめていると言えるでしょう。

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