スーリヤヴァルマン

スーリヤヴァルマン：激動のチャンパ王国の王

スーリヤヴァルマン（生没年不詳）は、12世紀後半から13世紀初頭にかけて、チャンパ王国（占城国）を統治した王です。その生涯は、パーンドゥランガの王としての短い期間、そしてチャンパ王としての波乱に満ちたものでした。彼の足跡を辿りながら、当時のチャンパ王国を取り巻く国際情勢や、彼が直面した苦難について解説します。

生い立ちとクメールとの関係

元々チャム族の王族であったスーリヤヴァルマンは、ヴィディヤーナンダナーという名で知られていました。1182年、彼はトゥムプラウク＝ヴィジャヤからクメールに亡命します。この亡命が、彼の運命を大きく左右することになります。

当時のクメール王、ジャヤーヴァルマン7世は、ヴィディヤーナンダナーの才能を見抜き、彼を重用しました。ヴィディヤーナンダナーは科学や軍事の教育を受け、ジャヤーヴァルマン7世から将軍に任命されます。マリャンで発生した反乱を鎮圧する功績を挙げ、ユーヴァラージャの称号と莫大な財宝を授けられました。

パーンドゥランガの王、そしてチャンパ王へ

1190年、チャンパ王ジャヤ・インドラヴァルマン4世がクメールに侵攻します。ジャヤーヴァルマン7世はヴィディヤーナンダナーに軍の指揮を任せ、見事チャンパ軍を撃退。その勢いでクメール軍はチャンパの都ヴィジャヤを占領し、ジャヤ・インドラヴァルマン4世を捕虜としました。

チャンパを征服したジャヤーヴァルマン7世は、その国土を二つに分割します。義弟のインをヴィジャヤの王とし、ヴィディヤーナンダナーにはヴィジャヤの南に位置するパーンドゥランガを与え、王としてスーリヤヴァルマンを名乗らせました。しかし、これらはクメールの傀儡政権に過ぎませんでした。

チャンパ再統一と李朝大越との関係

1191年、ヴィジャヤで政変が勃発。チャム族の王族ラシュパティがスーリヤジャヤヴァルマンを追放し、ジャヤ・インドラヴァルマン5世として即位します。クメールからの独立を画策したスーリヤヴァルマンは、翌1192年にヴィジャヤへ侵攻。ジャヤ・インドラヴァルマン5世を打ち破り、クメールに捕らえられていたジャヤ・インドラヴァルマン4世を殺害し、チャンパを再統一しました。

1194年には、ジャヤーヴァルマン7世が派遣したクメール軍を撃退し、その地位を確立します。その後、スーリヤヴァルマンは李朝大越に使者を送り、1199年には高宗から占城王に封じられました。

悲劇的な最期

しかし、スーリヤヴァルマンの治世は長くは続きませんでした。1203年、彼の叔父であるダナパティ・グラーマがクメールに通じ、クメール軍が侵攻してきます。敗北したスーリヤヴァルマンは、200隻以上の兵船で海上へ逃れ、大越の機羅海口（現在のハティン省キーアイン市社）に辿り着きました。

大越の殿指揮使知乂安州の杜清と州牧の范延はスーリヤヴァルマンを討とうとしましたが、事前に計画が漏洩。スーリヤヴァルマンは逆に杜清・范延とその兵200人以上を返り討ちにし、再び海上に逃亡。その後、彼の消息は途絶えてしまいます。

チャンパはクメールに併合され、ダナパティ・グラーマがジャヤーヴァルマン7世から旧チャンパ地域の統治を任されました。クメールによるチャンパ支配からの独立は、ジャヤーヴァルマン7世の死後、1220年にジャヤ・パラメーシュヴァラヴァルマン2世によって成し遂げられることになります。

スーリヤヴァルマンは、激動の時代に翻弄されながらも、チャンパの独立を維持しようと奮闘した王でした。彼の生涯は、当時の東南アジアにおける国際関係の複雑さを物語っています。

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