ジャヤーヴァルマン7世

ジャヤーヴァルマン7世：クメール王朝の復興王

ジャヤーヴァルマン7世（1125年 - 1218年/1220年）は、クメール王朝の国王として、1181年から1218年または1220年まで在位しました。彼はクメール王朝初の仏教徒の王であり、仏教の教えに基づいた理想的な王「転輪聖王」を目指し、戦乱で荒廃した国の復興に力を注ぎました。その治世は、慈善事業の推進と軍事遠征の両面で特徴づけられ、領土の拡大と国内の整備に大きく貢献しました。

生涯

ジャヤーヴァルマン7世は、ダーラニンドラヴァルマン2世を父に、ハルシャヴァルマン3世の娘チューターマニを母に持ちました。1169年、チャンパ王国への遠征中に父の死とヤショーヴァルマン2世の即位を知り帰還しましたが、その途上でヤショーヴァルマン2世が暗殺されたため、一時潜伏します。1177年、チャンパによるアンコール占領の報を受け、軍を率いて帰国。妻ジャヤラージャデーヴィーの祈りもあって、チャンパ軍を打ち破り、1181年に王位に就きました。即位後、ジャヤラージャデーヴィーが亡くなると、妹のインドラデーヴィーを王妃に迎え、国内の反乱を鎮圧しました。

1190年には再び侵攻してきたチャンパを撃退し、その首都ヴィジャヤを占領しました。その後、義弟のスーリヤジャヤヴァルマデーヴァと腹心のチャンパ人スーリヤヴァルマンをそれぞれの地の王に任命しますが、後にスーリヤヴァルマンは独立。1203年にチャンパを再征服し、1220年までクメールの支配下に置きました。1218年、南宋に使節を派遣した頃に没したとされ、彼の死後、クメール王朝は衰退に向かいます。

政策

ジャヤーヴァルマン7世は、チャンパとの戦いで荒廃した首都の再建を最重要課題としました。新たな首都アンコール・トムは、高さ約8mの城壁と幅約100mの外濠を備え、防御に重点を置いた設計となっています。また、略奪された寺院の再建にも力を注ぎ、バンテアイ・クデイ、タ・プローム、プリヤ・カーンなどの寺院を復興させました。王宮にはピミアナカスが用いられ、象のテラス、ライ王のテラスなどが造営されました。

さらに、バイヨンをはじめとする仏教寺院を建立し、特にバイヨンにはチャンパとの戦いを描いた浮彫が刻まれ、アンコール美術の最盛期を象徴しています。アンコール・トムの人口増加に対応するため、東西バライの北に新たなバライを建設しました。これらの壮麗な建築物は、ジャヤーヴァルマン7世の信仰心の表れと言えるでしょう。

また、国内には102の病院（アーロギャーシャーラ）を建設し、主要道路には16kmごとに宿駅を設け、交通網を整備しました。彼は、病人の療養と薬剤の供給にも携わり、民の苦しみを軽減することに尽力しました。しかし、寺院建立のための重税と労役、軍事賦役は民衆に大きな負担となり、国の弱体化を招く要因ともなりました。

家族

妃：ジャヤラージャドゥヴィー

ジャヤーヴァルマン7世を題材とした作品

癩王のテラス（1969年） - 三島由紀夫作の戯曲
* シヴィライゼーションVI（2016年） - フィラクシス・ゲームズ社のコンピュータゲーム

まとめ

ジャヤーヴァルマン7世は、クメール王朝の歴史において、特筆すべき国王の一人です。仏教への深い信仰と、優れた政治手腕をもって、荒廃した国土を復興し、クメール文化の黄金時代を築き上げました。彼の残した業績は、今日においてもアンコール遺跡群を通じて、その偉大さを伝えています。

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