インドラヴァルマン

インドラヴァルマン2世：チャンパ王国を刷新した初代国王

インドラヴァルマン2世（生年不詳 - 898年）は、チャンパ王国（占城国）第6王朝の初代国王であり、在位期間はおよそ854年から898年です。即位前の名前はラクシュミーンドラ・ブーミーシュヴァラ・グラーマスヴァーミンといい、パラマブッダーローカという王号も持っていました。

生涯

アマラーヴァティー地方の有力な家系であるナリケラヴァムシャの出身で、チャム族の伝承に登場する女神ウロジャの子孫であると称していました。先代のヴィクランタヴァルマン3世には後継者がいなかったため、王位を継承することになりました。

政治と遷都

インドラヴァルマン2世は、出身階級にとらわれず、ヴァルナ（社会階層）に基づいてバラモンやクシャトリヤといった優秀な人材を大臣に登用しました。また、政治の中心をそれまでの南方パーンドゥランガにあったヴィラプラから、新たにアマラーヴァティーに建設したインドラプラへと遷都しました。この遷都は、国家運営の基盤を強化し、新たな時代を築くための重要な決断でした。

対外政策

861年12月には、唐の安南都護府へ侵攻するという大胆な行動に出ました。これは、チャンパ王国の勢力を拡大し、周辺地域への影響力を高めるための戦略的な試みであったと考えられます。

宗教改革

インドラヴァルマン2世の治世において最も重要な出来事の一つは、宗教改革です。それまで主流であったヒンドゥー教に代わって、ヴァジュラヤーナ系の仏教を導入しました。875年には、インドラプラにアヴァローキテーシュヴァラ（観音菩薩）を祀る巨大な仏教寺院、ラクシュミーンドラローケーシュヴァラ廟を建立しました。東西1.3kmにも及ぶこの寺院は、当時のチャンパ王国における仏教信仰の中心地となり、その遺構の一部は、現在ドンドゥオン塔として見ることができます。

唐との関係

一方で、インドラヴァルマン2世は唐との外交関係も維持しました。877年には唐へ使節を派遣し、馴象（調教された象）3頭を献上しています。これは、軍事的な緊張を緩和し、交易を通じて国益を図るための外交的な努力であったと考えられます。

後継者

インドラヴァルマン2世には実子がなかったため、彼の死後、王位は妃ハラデーヴィーの甥にあたるジャヤ・シンハヴァルマン1世が継承しました。

インドラヴァルマン2世は、チャンパ王国の歴史において、遷都や宗教改革といった重要な政策を推進し、国家の新たな方向性を示した重要な人物です。彼の治世は、チャンパ王国の文化、政治、宗教に大きな影響を与え、後世にまでその足跡を残しました。

参考資料

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Charles Higham (May 1, 2004). Encyclopedia of Ancient Asian Civilizations. Facts on File. ISBN 978-0816046409
Vincent Lefèvre (12 July 2011). Portraiture in Early India: Between Transience and Eternity. Brill. ISBN 978-9004207356
R. C. Majumdar (1927). Ancient Indian colonies in the Far East. Vol. I, Champa. Punjab Sanskrit Book Depot
石井米雄、桜井由躬雄 編『東南アジア史 I 大陸部』山川出版社〈新版 世界各国史 5〉、1999年12月20日。ISBN 978-4634413504。
『唐会要』巻九十八 林邑国
* 『嶺表録異』巻上

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