ズドラヴコ・クリヴォカピッチ

ズドラヴコ・クリヴォカピッチ（セルビア語: Здравко Кривокапић）は、1958年9月2日生まれのモンテネグロの人物です。機械工学の教授、作家としての顔も持ちますが、政治家として特に知られています。

彼はモンテネグロ大学や東サラエボ大学で教鞭をとる傍ら、政治活動にも深く関わりました。2020年12月4日から2022年4月28日までの期間、モンテネグロの首相を務めました。彼の政治的キャリアにおいて重要な役割を果たしたのが、自身も共同創設者の一人である非政府組織「We won't give up Montenegro」です。この組織は、教会の法的地位や財産を対象とする物議を醸した宗教法案への対応として設立されました。モンテネグロ国内の教授や知識人によって立ち上げられ、特に同国のセルビア正教会を強く支持する立場をとりました。

クリヴォカピッチ氏の政治的スタンスは、一般的に中道右派と位置づけられています。腐敗防止を掲げ、キリスト教民主主義、そして西ヨーロッパとの連携を重視する親ヨーロッパ的な姿勢が見られます。経済政策においては自由主義的な傾向を持ちつつ、特に親教会、セルビア民族の権益を擁護し、文化的には保守的な考え方を持つ人物と認識されています。

首相在任中、彼はその親教会の立場を明確にしました。例えば、2021年9月5日に行われたセルビア正教会におけるモンテネグロおよびリトラルの大司教、イオアニキ2世の即位式典を巡る問題では、ミロ・ジュカノヴィチ大統領との間で意見が対立しました。ジュカノヴィチ大統領がツェティニェの修道院での式典開催に反対し、場所の変更を求めたのに対し、クリヴォカピッチ首相はこれを批判。国内の多数派である正教会が必要とする一切の支援を提供すると表明しました。

また、ジュカノヴィチ大統領に対する弾劾手続きが2021年11月19日に開始された際には、政局は一層不安定化しました。しかし、憲法裁判所は2022年2月4日に大統領に憲法違反の行為はなかったとの判断を下し、弾劾手続きは終結しました。

一方で、クリヴォカピッチ政権は内部的な対立に直面しました。クリヴォカピッチ氏自身が親セルビア・ロシア寄りとも目される一方、連立を組むパートナーの一部は親ヨーロッパ連合路線を強く志向しており、両者の間で政治路線の違いが顕著になり、政権運営は深刻な機能不全に陥りました。この膠着状態を打開するため、一部の連立パートナーは内閣不信任決議案を提出しました。この決議案は2022年2月4日に採決され、賛成43票、反対11票、棄権または欠席81票で可決されました。これによりクリヴォカピッチ内閣は崩壊し、彼の首相としての短い任期は幕を閉じました。

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