セイヨウスグリ

セイヨウスグリ（西洋酸塊）

セイヨウスグリ（学名: Ribes uva-crispa）は、スグリ科スグリ属の落葉低木で、別名マルスグリ、オオスグリとも呼ばれます。英語ではgooseberryと呼ばれ、特にアメリカやイギリス北部ではグースベリー、イギリス南部ではグズバリと発音されます。

ヨーロッパなどで広く栽培されており、甘酸っぱい果実はジャムやゼリーなどの加工品として親しまれています。近縁種にはアメリカスグリ（Ribes hirtellum Michaux）などがあります。

属・亜属分類

スグリ属は、通常スグリ亜属 Subgen. Grossularia に分類されますが、Grossulariaを独立した属として扱う分類学者もいます。しかし、セイヨウスグリとスグリ属のクロスグリを交配させることで、ヨスタベリーなどの栽培可能な雑種が得られることから、後者の分類は適切ではないと考えられています。

スグリ亜属 Subgen. Grossularia に属する種は、茎にトゲがあること、1つの短い茎に1〜3個の花をつけ、総状花序を形成しないことが特徴で、スグリ属の他の亜属とは異なります。

特徴

セイヨウスグリは、高さ1〜3メートルの低木の茂みを形成し、枝には鋭いトゲが密生しています。単独で生育するか、短い側枝を基点とした2〜3本の木からなる放射状に広がる茂みを形成します。丸みを帯びた切れ込みの多い3〜5枚の葉の間から、1個または1対ずつ鐘状の花を咲かせます。野生の果実は栽培種よりも小さいことが多いですが、味が良いとされています。果実には通常、細かい毛が生えていますが、毛のない変種も存在します。また、果実の色は通常緑色ですが、まれに濃い紫色をしています。

分布

セイヨウスグリは、ヨーロッパと西アジアが原産です。フランス東部からヒマラヤにかけて、アルプスの雑木林や岩石の多い低地の森に自生しています。イギリスでは、雑木林や生け垣、古い廃墟などで見られますが、栽培の歴史が長いため、グレートブリテン島固有の植物相であるかは定かではありません。アルプス山脈の麓に位置するピエモンテ州やサヴォイア辺りでもよく見られます。

古代ローマの博物学者であるガイウス・プリニウス・セクンドゥスは、「イタリアの暑い夏は生育に適さない」と述べており、当時からセイヨウスグリの存在が知られていたことがうかがえます。ドイツやフランスでは豊富に見られ、中世には野生の果実の酸味のある果汁が解熱薬として珍重されていましたが、それほど多く生育していたわけではないと考えられています。英語の古名 Fea-berry が方言として残っている地域があることから、比較的早い時期に庭園で栽培されていたイギリスでも、同様の価値を持つものとして扱われていたことがわかります。

利用

セイヨウスグリの果実は食用とされ、生食も可能ですが、日本ではジャムなどに加工して流通することが一般的です。農文協刊の「聞き書 北海道の食事」では、道東十勝地方の「春の朝食」に「グースベリーの塩漬」が紹介されています。日本国内でも造成された山林や山野で栽培されており、主な生産地は長野県や東北地方などの寒冷地です。

文学作品にも登場することがあり、『家なき子』ではグースベリータルトがスグリタルトと訳され、『白雪姫』ではグースベリーパイがイチゴパイと訳されています。

スグリ属は、アメリカの五葉マツに壊滅的な被害を与える五葉マツ類発疹さび病の原因菌 Cronartium ribicola の中間宿主となるため、病気の蔓延を防ぐ目的で、アメリカ東部の一部自治体では本種を含むスグリ属植物の栽培が禁止されています。

参考文献

(参考文献の情報は省略)

関連項目

スグリ
* Fruit fool

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