セイヨウヒイラギガシ

セイヨウヒイラギガシ (Quercus ilex)

セイヨウヒイラギガシは、ブナ科に属する常緑高木で、その学名は Quercus ilex です。英語では「ホルムオーク」や「イレクス」とも呼ばれています。日本語では「西洋柊樫」として知られ、その名は葉の形状がセイヨウヒイラギに似ていることに由来しています。

特徴

この木の原産地は地中海北岸地域で、特にスペインでは広く分布しています。ホワイトオークに分類されており、夏にはドングリが熟します。成木は20メートル以上の高さに成長し、幅も6メートルを超えることがあります。樹皮は灰色であり、ひび割れた独特の質感を持っています。

葉は卵形で、若い葉にはトゲが見られますが、成熟した葉にはなくなります。葉の裏面は灰色で、細かい毛で覆われており、これが光を反射しつつ周囲の空気を閉じ込め、水分の蒸発を抑える役割を果たしています。この木はオーク類の中で常緑であることが特徴的で、古い葉は新しい葉が2年成長するまで落ちません。

環境条件と生態

花が咲く季節は春で、尾状花序が下がりながら多くの花を咲かせます。花が終わると約半年後にドングリの実が成熟し、動物たちの重要な食料源となります。ドングリの実りは年により異なり、多く実る年を「なり年」と呼びます。その年は多くの葉を茂らせ、栄養をたくわえます。一方、なり年の出た後はドングリの数が減少し、通常より多くの葉が落ちる傾向にあります。

利用

セイヨウヒイラギガシは硬く丈夫な木材を提供するため、古代より建物の柱材や工具、荷馬車、船舶などに利用されてきました。薪や炭の生産にも役立っています。

イベリア半島では、この木のドングリがイベリコ豚の養殖に用いられ、特にハム「ハモン・イベリコ」の製造に重要な役割を果たしています。イベリコ豚が育つ森林は「デエサ」と呼ばれ、そこにはセイヨウヒイラギガシとコルクガシの森があります。イベリコ豚は1日に約6〜10キロのドングリを食べ成長し、特にセイヨウヒイラギガシの森で育った豚の肉は特に評価されています。

このように、セイヨウヒイラギガシは寒暖差のある気候に適した特異な生態を持っており、地中海沿岸の重要な生物資源なのです。

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