セキュリタリアン

『セキュリタリアン』は、1992年に創刊された防衛庁（現・防衛省）と自衛隊に関する月刊広報誌です。前身である『防衛アンテナ』とは異なり、一般国民への情報発信を重視した内容が特徴でした。

『防衛アンテナ』が専門性の高い論文や装備品の技術解説を主としていたのに対し、『セキュリタリアン』はカラー写真やイラストを豊富に用い、より親しみやすい誌面デザインを採用しました。キャッチコピーは「日本の防衛を考える情報誌」で、より広い読者層へのアプローチを目指しました。

誌面構成としては、「特集」で自衛隊の重要問題を取り上げ、「自衛隊ルポ」で部隊を紹介するなど、多様な情報を掲載していました。装備品の紹介や専門家によるコラム、著名人へのインタビューなども掲載され、内容は多岐に渡りました。毎号、多数の現職自衛官や防衛庁職員が登場し、制度解説やインタビューに答えていましたが、掲載された意見は個人の見解である旨の注意書きが必ず添えられていました。

創刊当時は、女性自衛官の増加や防衛大学校の女子学生受け入れ開始など、自衛隊を取り巻く環境に変化が見られました。この状況を踏まえ、広報課長の提案により「防衛庁OL百人委員会」が設立され、女性向けのページも設けられました。このページでは、労働意識、セクハラ、人事処遇など、女性自衛官が直面する問題にも言及していました。

初期の『セキュリタリアン』では、阪神・淡路大震災におけるマスコミ報道への反論や、自衛隊に関する報道全般への批判的な記事も見られました。これは、冷戦期における自衛隊を取り巻く負のイメージや、正確な情報伝達の不足への対応策として捉えることができます。しかし、後期には部隊紹介や時事トピックを中心に、より分かりやすく淡々と情報を伝える内容へと変化していきました。著名人として、AV女優や声優を起用したこともありました。

配布先は、自衛隊各部隊、都道府県立図書館、大学図書館などでしたが、個人でも防衛弘済会を通して購入ができました。創刊時の発行部数は2万部を計画していました。

興味深い点として、原稿執筆を自衛官に依頼する場合があり、5000円を超える謝礼については、自衛隊員倫理法に基づき、倫理審査会議で審査が行われていたことが記録に残っています。

『セキュリタリアン』に対する評価は様々です。読売新聞は、誌面で取り上げられた自衛官の「本音」に触れ、肯定的な評価を与えていました。一方、内閣府政府広報室の調査（1995年）では、広報活動における認知度は高くありませんでした。一般国民への認知度向上を目指した誌面作りにも関わらず、期待された成果は得られなかったと言えるでしょう。兵頭二十八氏からは、記事内容に物足りなさを感じたという意見も残されています。

2006年9月号をもって『セキュリタリアン』は休刊しました。休刊の理由は、防衛庁との随意契約の見直しによるものでした。その後継誌として、2007年に扶桑社から『MAMOR（マモル）』が創刊されました。防衛省が編集協力しており、事実上の後継誌と言えるでしょう。防衛弘済会は2009年に出版事業を終了したため、『セキュリタリアン』を入手することは現在非常に困難となっています。

『セキュリタリアン』は、自衛隊と一般国民との間の情報伝達を目的とした広報誌として、その時代背景や社会状況を反映した貴重な資料と言えるでしょう。その存在は、日本の防衛政策と広報活動の歴史を理解する上で重要な意味を持ちます。

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