セクリターテ

セクリターテ：ルーマニア社会主義共和国の秘密警察

セクリターテ（ルーマニア語: Securitate）は、ルーマニア社会主義共和国の秘密警察組織です。正式名称を国家保安局（Departamentul Securității Statului）といい、内務省の傘下にありました。この組織は、ルーマニア国内において、広範な情報収集、監視活動、そして反体制派の弾圧を行いました。また、国外での秘密作戦も展開しており、その活動はルーマニア社会に大きな影響を与えました。

名称と呼称

ルーマニア語では、セクリターテの隊員を指す言葉として、男性単数形は「セクリスト」（securist）、女性単数形は「セクリスタ」（securistă）、複数形は「セクリシュティ」（securiști）と言います。ルーマニア在住のハンガリー人は、組織を「セクリターテー」（Szekuritáté）、隊員を「セクシュ」（szekus）と呼んでいました。一方、ルーマニア在住のドイツ人は、隊員を「ゼクリスト」（Sekurist）、「ゼクリスティン」（Sekuristin）、「ゼクリステン」（Sekuristen）と呼んでいました。これらの異なる呼称は、多民族が共存するルーマニア社会において、セクリターテという存在がどのように認識されていたかを物語っています。

特徴

セクリターテの最大の特徴は、構成員の多くが国営の孤児院出身者で占められていたことです。彼らは「優秀な子供」として選抜され、特殊な訓練を受けてセクリターテへと配属されました。この組織は、ルーマニア全土に盗聴器を設置し、カフェやレストランなど、あらゆる場所で国民を監視していました。また、小学校にもメンバーを間諜として送り込み、国民の不満や批判を政府に報告させていました。その任務は、防諜、反体制派対策、そして当時の大統領ニコラエ・チャウシェスクとその側近の個人警護にまで及んでいました。

歴史

設立から1965年まで

セクリターテは、1948年8月30日に、ソ連の協力者であったゲオルゲ・ピンティリーを責任者として設立されました。設立当初は、共産党政権に批判的な自由主義者や王制派を「反革命分子」「外国のエージェント」として摘発・弾圧することを主な任務としていました。設立当初の職員の構成は、ルーマニア人が大半を占めていましたが、ユダヤ人やハンガリー人、ロシア人などの少数民族も含まれていました。

1960年代から1970年代にかけて、ワシレ・ゲオルゲがセクリターテの長官となり、反体制派に対する拷問を個人的に行っていたとされています。その後、数々の長官が交代し、組織は拡大していきました。

1965年から1989年まで

1965年にニコラエ・チャウシェスクが共産党書記長に就任すると、セクリターテの影響力は一層強まりました。チャウシェスク政権は、国民に対する監視を強化し、セクリターテは国民の生活に深く浸透していきました。しかし、1978年にルーマニア対外諜報局の副局長であったイオン・ミハイ・パチェパがアメリカに亡命したことで、セクリターテの対外諜報網は大きな打撃を受けました。

終焉

1989年12月のルーマニア革命では、セクリターテは政権側に立ち、国軍と銃撃戦を繰り広げました。チャウシェスクが処刑された後、セクリターテは解体され、多くの関係者が裁判にかけられました。元メンバーは公職を追放され、一部は犯罪組織に身を投じたとされています。また、セクリターテに育てられていた子供たちは、ストリートチルドレンとなり、社会問題となりました。

機構

セクリターテは、以下の部門から構成されていました。

技術作戦総局
防諜局
監視局
第4局
第5局
内部保安局
K局
捜査局
郵便検閲局

歴代長官

セクリターテの歴代長官は以下の通りです。

ゲオルゲ・ピンティリー
ワシレ・ゲオルゲ
ディンク
ヴラダ
エミル・ボブ
トゥドル・ポステルニク
アレクサンドル・ドラギチ

セクリターテは、ルーマニア社会主義共和国の暗部を象徴する存在であり、その活動は多くの国民に深い傷跡を残しました。

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