セザール・ド・ノートルダム

セザール・ド・ノートルダム：多才な才能の持ち主

セザール・ド・ノートルダム（1553年12月18日 - 1630年?）は、父ミシェル・ド・ノートルダム、すなわちノストラダムスの息子として生まれました。彼は詩人、歴史家、画家として多彩な才能を発揮し、フランスの文化史に足跡を残しました。父の名声とは異なり、彼は「ノストラダムス」の名をほとんど用いませんでした。

生涯

セザールは、1553年にサロン＝ド＝プロヴァンスで、ノストラダムスとその再婚相手アンヌ・ポンサルドの間に生まれました。幼年期や青年期については詳しい記録が残っていませんが、彼自身の記述によれば、サン・バルテルミの虐殺の際にはパリに滞在していたとされています。

彼は画才にも恵まれ、青年期にはパリの画家エチエンヌ・デュモンストリエやフランソワ・ケネルに師事しました。彼の詩の特徴である、登場人物のポーズや情景の色彩を丁寧に描き出す視覚的な美しさは、画家としての経験に由来すると考えられています。また、音楽にも造詣が深く、当時リュートの名手として知られていたという指摘もあります。

セザールは、サロンの名士として市政にも携わり、1598年には筆頭執政官に就任しました。1600年11月には、王妃マリー・ド・メディシスがサロンに入市した際、彼が出迎えたと記録されています。

文芸活動においては、作詩を中心に活動しました。1590年代半ばから著作に詩や序文を寄せ、1598年には最初の単著『サロン市の廃墟と悲惨』を発表しました。その後、エクスの出版業者ジャン・トローザンやトゥールーズの出版業者コロミエ家によって、彼の著作が次々と刊行されました。

また、叔父ジャン・ド・ノートルダムの研究を引き継ぎ、郷土史研究にも取り組みました。その成果は、1614年に1000ページを超える大著『プロヴァンスの歴史と年代記』として結実しました。この文献は、古代から16世紀末までのプロヴァンス史を扱っており、フレデリック・ミストラルも歴史を題材とした作品の出典としています。続編にあたる草稿の一部が現存していますが、公刊には至っていません。

セザールの没年は、長らく1629年とされていましたが、近年、1630年1月23日付の遺言書が確認されています。1604年にはアダン・ド・クラポンヌの縁者クレール・ド・グリニャンと結婚しましたが、子供はいませんでした。

著作

セザールは、生涯にわたり多くの著作を出版しました。以下に主なものを紹介します。

『サロン市の廃墟と悲惨に関する言説』（1598年）
『真珠、あるいは聖女マグダラの涙』（1601年）
『フィレンツェからマルセイユに至る王妃の旅程で起こった本当の話』（1601年）
『王妃のサロン市への入市』（1602年）
『王太子殿下御生誕に寄せる讃歌』（1602年）
『王太子殿下と王妃のイメージ』（1602年）
『スキピオの夢』（1606年）
『デュマス、あるいは義賊』（1606年）
『ナルキッソスの描写』（1606年）
『悲しみのマリア』（1606年）
『ギーズ公殿下の従者にしてリュートの名手シャルル・デュ・ヴェルディエの死を悼む詩篇』（1607年）
『エスプリ的韻文』（1607年）
『英雄的掌編と様々な詩篇』（1608年）
『プロヴァンスの歴史と年代記』（1614年）
『イッピアード、あるいはゴドフロワと騎士たち』（1620-1622年頃、未刊）
『第二ジュネーヴの占領前夜と異教のヒュドラ最期の窮地について。国王への予言』（1629年）

絵画

セザールは画家としても才能を発揮し、肖像画などを制作しました。

ノストラダムスの肖像画（1614年頃）
ノストラダムスの肖像画（作成時期未詳）
* 自画像（1616年）

これらの絵画は、彼の芸術的な才能を示す貴重な資料となっています。

まとめ

セザール・ド・ノートルダムは、詩、歴史、絵画など、多岐にわたる分野で才能を発揮した人物です。父ノストラダムスの名声に隠れがちですが、彼の業績はフランスの文化史において重要な位置を占めています。彼の作品は、当時の社会や文化を理解するための貴重な資料であり、今後も研究が進められることが期待されます。

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