セシル (浅香唯の曲)

浅香唯「セシル」：映画とアイドルの融合が織りなす、青春の叙情詩

1988年8月18日、ハミングバードより発売された浅香唯の11枚目のシングル「セシル」。この楽曲は、フランソワーズ・サガンの小説を原作とする映画『悲しみよこんにちは』の主人公セシルをインスピレーション源としています。映画の持つ切ない世界観と、浅香唯の繊細な歌声が絶妙に絡み合い、多くのリスナーの心を掴んだ名曲と言えるでしょう。

名詞で自分を呼ぶ、大胆な表現

楽曲の注目すべき点として、歌詞の中に登場する「名字で自分を呼び捨てする」という表現が挙げられます。これは、当時浅香唯自身が自分を「浅香は」と呼ぶことがあったというエピソードから生まれたユニークなアイデアです。この大胆な表現は、セシルの内面にある複雑な感情を巧みに表現し、楽曲に深みを与えています。浅香唯自身は、この曲を「最初は女の子が気に入ってくれたけど、男の子もついてきてくれた」と振り返っており、幅広い層からの支持を得たことを示しています。

シングルとアルバム、異なるエンディング

シングルバージョンではフェードアウトで終わる「セシル」ですが、翌年3月発売のオリジナルアルバム『MELODY FAIR』収録バージョンでは、フェードアウトすることなく、異なるエンディングでアレンジされています。このアルバムバージョンは、テレビ番組などで披露される際に使用されることも多く、シングルとはまた違った魅力を感じさせる仕上がりになっています。

多くのアーティストに愛された一曲

「セシル」は、浅香唯の代表曲として長く愛され続けており、多くのアーティストによってカバーされています。チェッカーズの鶴久政治氏がラジオ番組でこの曲を気に入っていることを公言したというエピソードもあり、80年代アイドルソングを代表する楽曲として、世代を超えて支持されています。

具体的には、堀ちえみ、Donna Fiore、武藤彩未、243（都志見久美子）といった多彩なアーティストが「セシル」をカバーしており、それぞれのアーティストの色が加わった解釈を楽しむことができます。

さらに、1991年発売のベストアルバム『Thanks a lot』には、ボーカルを新録したバージョンが収録され、セガ・インタラクティブのプライズゲーム機DreamCatcherのBGMとしても使用されるなど、その人気は現在も衰えることを知りません。作曲者NOBODYの30周年記念CD-BOX『NOBODY BOX 〜Early Days〜』には、デモバージョンも収録されており、楽曲誕生の裏側を知ることもできます。

カップリング曲「哀しみの翼」

カップリング曲である「哀しみの翼」も、浅香唯の楽曲の中でも高い人気を誇っています。この曲は、シングル・コレクション、浅香唯大全集 THE COMPLETE BOX、そして2010年発売の『MELODY FAIR』紙ジャケットCDのボーナストラックなどに収録されており、アルバム『MELODY FAIR』に収録されている「セシル」と合わせて、浅香唯の音楽性の幅広さを堪能できる楽曲です。

多様な収録作品と、その軌跡

「セシル」は、数多くのアルバムやベスト盤に収録されています。『MELODY FAIR』、『Thanks a lot』、『シングル・コレクション』、『ANNIVERSARY 2824』（ライブアルバム）、『浅香唯大全集 THE COMPLETE BOX』、『究極のベスト! 浅香唯』、『CRYSTALS 〜25th Anniversary Best〜』、『浅香唯 30周年記念コンプリートBOX』など、浅香唯のキャリアを辿る上で欠かせない楽曲であることがわかります。また、『Fun!Fan!Fun! Yuiグラフィティ』や『ロックンロール・サーカス'89 浅香唯スパークリング・ライブ』といった映像作品にも収録されており、彼女のライブパフォーマンスも楽しむことができます。

「セシル」は、単なるアイドルソングとしてだけでなく、映画の世界観、作詞作曲編曲陣の技術、そして浅香唯自身の個性が見事に融合した、時代を超えて愛される名曲と言えるでしょう。その魅力は、これからも多くの人々の心を捉え続けることでしょう。

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