セシル・エフィンジャー

セシル・エフィンジャー（Cecil Effinger、1914年7月22日 - 1990年12月22日）は、20世紀を代表するアメリカ合衆国の作曲家であり、教育者、そして独創的な発明家としてもその名を残しています。

コロラド州コロラドスプリングスに生まれたエフィンジャーは、その生涯のほとんどを故郷であるコロラドで過ごしました。彼は音楽家であった父と教師であった母のもとに育ち、幼い頃から音楽と学問の両方に触れる機会を得ました。彼はまず、コロラドカレッジで数学を専攻し、1935年に学位を取得しています。しかし、その興味は次第に音楽へと傾倒し、1934年から1936年にかけて和声と対位法を集中的に学びました。さらに、1939年には音楽の都パリへと渡り、伝説的な音楽教育者であるナディア・ブーランジェのもとで研鑽を積んでいます。

演奏家としては、オーボエ奏者として活動しました。1934年からはコロラドスプリングスのオーケストラで、そして1937年からはデンバーのオーケストラでも演奏を兼任するなど、地元の音楽シーンで活躍を見せました。また、教育者としてのキャリアも早くからスタートさせており、1936年には母校であるコロラドカレッジで教壇に立ちました。この教職は、第二次世界大戦が始まる1941年まで続けられました。大戦中は軍務につき、音楽の才能を活かして軍楽隊の指揮者を務めています。

戦後、エフィンジャーはコロラドカレッジに一度復帰しますが、1948年にはコロラド大学ボルダー校へと活動の場を移します。そこで彼は作曲科の主任教授に就任し、1981年に退職するまでの長きにわたり、多くの後進の指導にあたりました。大学での教育活動は、彼の作曲活動と並行して行われました。

作曲家としては非常に多作であり、彼が番号を付した作品は実に168曲にも上ります。その作品は多岐にわたりますが、特に重要なものとしては、5曲の交響曲、2曲の小交響曲、そして5曲の弦楽四重奏曲などが挙げられます。また、合唱曲の分野でも高く評価されており、オーボエと合唱のために書かれた『4つのパストラル』は、彼の合唱作品の中でも特に広く知られています。エフィンジャーの音楽スタイルは、当時の新しい実験的な手法に積極的に傾倒するものではありませんでしたが、自身の作品が持つユニークな響きを「無調の調性（atonal tonality）」という言葉で表現しています。

エフィンジャーは、音楽の分野だけでなく、発明家としても顕著な功績を残しました。1945年にパリ滞在中に、楽譜浄書の効率化に役立つ音楽タイプライターのアイデアを着想しました。帰国後、そのアイデアを具現化するための開発を進め、1947年には最初の試作品を完成させました。そして、1954年にはこの画期的な機械の特許を取得し、「ミュージックライター（Musicwriter）」と名付けました。翌年の1955年には製品として市場に投入され、楽譜作成の方法に新たな選択肢を提供しました。

このように、セシル・エフィンジャーは、作曲家、教育者、演奏家、そして発明家という多才な顔を持ち、生涯を通じて音楽とその周辺分野に多大な貢献をしました。特にコロラドを拠点とした活動は、その地の音楽文化の発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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