セター・タウィーシン

セター・タウィーシンの生涯と政治

セター・タウィーシン（Srettha Thavisin）は、1962年2月15日にタイのバンコクで生まれました。軍人の父と華人系財閥出身の母を持ち、恵まれた家庭環境で育ちました。彼はクレアモント大学院大学で経営学修士号（MBA）を取得後、大手日用品メーカーP&Gで4年間勤務しました。その後、家業の不動産業界に転身し、サンシリという大手不動産会社へと成長させ、タイの不動産王と呼ばれるまでになりました。

政治の世界には、元首相であるインラック・シナワットの非公式アドバイザーを務めたことで関わりを持ち始めました。2022年にはタイ貢献党に正式に入党し、本格的な政治活動を開始しました。2023年の総選挙では、タイ貢献党は前進党に次ぐ第2党となり、連立政権を樹立する中で、セターは首相候補として浮上しました。

しかし、前進党のピター・リムジャロェーンラットが首相指名選挙で過半数を獲得できず、その後の再選挙も保守派に阻まれました。これにより、タクシン派の流れを汲むタイ貢献党が主導権を握り、親軍派を含む12党との連立合意が成立しました。旧敵同士であるタクシン派と親軍派が連立を組むという異例の事態は、より急進的な前進党の台頭に対する危機感が背景にありました。

2023年8月22日、セターは国会の上下両院合同投票で首相に選出され、翌日にはラーマ10世国王の承認を得て正式に首相に就任しました。しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。セター政権下では、非軍人が国防相に就任し、経済政策が重視された一方、軍の予算は通りにくくなり、親軍派の不満が高まりました。また、タクシンとの政治活動を控えるという合意も破られ、タクシンの影響力が増大しました。

セターは首相就任当初、財務大臣も兼任していましたが、2024年4月28日の内閣改造でピチャイ・チュンハバジラを財務大臣に任命し兼任を解きました。しかし、この内閣改造で首相府相に起用したピチット・チューンバーンが過去に法廷侮辱罪で実刑判決を受けていたことが発覚。これが憲法の定める閣僚の政治倫理規定に違反しているとして、親軍保守系の上院議員グループから訴えられました。ピチットは辞任しましたが、セター自身も憲法裁判所に提訴され、最終的に2024年8月14日、憲法裁はセターの任命責任を認め、解職命令を下しました。

セターは憲法裁の決定を尊重し辞任しましたが、連立政権は維持され、後任にはタクシンの娘であるペートンタン・シナワットが選出されました。彼女は8月18日に国王の承認状を受け、後継首相となりました。

セター・タウィーシンの人物像

セター・タウィーシンは、実業家としての手腕だけでなく、その人物像も注目されています。妻はアンチエイジング専門の医師で、2男1女の父親でもあります。彼はサッカーを愛し、スポーツ新聞にコラムを執筆した経験もあります。

身長は192センチと、ASEANの指導者の中で最も高く、世界でも2番目の高身長の指導者として知られています。ファッションセンスも特徴的で、原色を好み、黄色のネクタイに水色のスーツを着用することが多いようです。彼は、その独特なファッションセンスでも知られています。

結論

セター・タウィーシンは、実業家から政治家へと転身し、タイの首相を務めた人物です。彼の政治キャリアは、連立政権の複雑さ、政治的な駆け引き、そして憲法裁判所の介入という、激動の連続でした。彼の経験は、タイの政治情勢の複雑さと、その権力構造における変化を示唆するものでした。

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