タイ貢献党

タイ貢献党（Pheu Thai Party）

タイ貢献党（タイ語: พรรคเพื่อไทย、Phak Pheu Thai、略称：PT、英語: Pheu Thai Party; For Thais Party）は、タイ王国の主要な政党の一つです。しばしば新党プアタイ、またはプアタイ党とも日本語で表記されます。

歴史的背景

この党は、タクシン・シナワット元首相が創設したタイ愛国党の流れを汲む人民の力党を前身としています。タクシン派の政治勢力の中核を担い、民主党と並ぶ二大政党の一角を形成しています。2008年、人民の力党が憲法裁判所によって解党命令を受ける可能性が高まったため、その受け皿としてタイ貢献党が設立されました。

2008年12月2日、人民の力党が解党を命じられると、翌日には旧人民の力党の国会議員80名がタイ貢献党への参加を表明しました。これにより、タイ貢献党は事実上、タクシン派の継承政党としての地位を確立しました。同年12月7日には、ヨンユット・ウィチャイディット氏が党首に正式に選出され、人民の力党解党に伴う議員の移籍が進みました。しかし、同年12月15日には、野党であった民主党のアピシット・ウェーチャチーワ氏が首相に選出され、タクシン派は7年ぶりに野党へと転落しました。

2011年総選挙での勝利と政権復帰

2011年の総選挙では、タイ貢献党は過半数となる265議席を獲得し、政権を奪還しました。同年8月5日には、党の主要人物であり、タクシン元首相の妹であるインラック・シナワット氏が首相に就任しました。インラック政権下では、ヨンユット・ウィチャイディット氏が副首相兼内相を務めましたが、土地不正取引疑惑により、2012年10月4日に党首と議員を辞職しました。その後、ジャルポン・ルァンスワン氏が新たな党首に選出されました。

2014年クーデター後

2014年5月の軍事クーデター後、ジャルポン・ルァンスワン氏が党首を辞任し、その後、ウィロート・パオイン氏が党首代理を経て、2018年に正式な党首に就任しました。

2023年総選挙とその後の展開

2023年の総選挙では、タイ貢献党は141議席を獲得し、第2党となりました。当初は、第1党の前進党を中心とした野党連合による連立政権樹立を目指しましたが、後に離脱しました。その後、親軍政党2党を含む11党による大連立に合意し、同年8月22日には貢献党所属のセター・タウィーシン氏が首相に選出されました。さらに、同年10月27日には、タクシン元首相の次女であるペートンターン・シナワット氏が党首に選出されました。

セター政権下では、国防相に非軍人が就任し、軍予算の編成も従来より難しくなったとされています。また、不敬罪で訴追され海外に逃亡していたタクシン元首相が帰国し、政治活動を再開したことで、その影響力が強まりました。この状況を懸念した親軍保守系の議員たちは、セター首相が過去に有罪判決を受けた人物を閣僚に任命したことを理由に憲法違反であると主張し、憲法裁判所に解任を請求しました。

2024年8月14日、憲法裁判所は、セター首相の内閣改造が憲法の倫理規定に違反すると判断し、セター首相に解職命令を下しました。これを受け、貢献党と親軍政党は協議を行い、連立政権を維持したまま貢献党から新たな首相を選出することになりました。同年8月16日、タクシン元首相の娘であるペートンタン党首が後任の首相に選出されました。

法政大学の浅見靖仁教授は、セター首相の解任はタクシン元首相に対する警告であると分析していますが、タクシン元首相は強気の姿勢を崩さなかったと見ています。

関連事項

タイの政党
人民の力党
* タイ愛国党

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