セッツェのカルロ

セッツェのカルロ

セッツェのカルロ（伊: Carlo da Sezze, 1613年10月19日 - 1670年1月6日）は、17世紀イタリアにおいて活躍したカトリック教会の聖人であり、フランシスコ会に属する模範的な修道士、そして深い神秘体験を持つ神秘家として知られています。彼はローマ近郊の小さな町、セッツェで農夫の息子として生を受けました。

幼少期から修道生活へ

カルロは農家の家庭に育ちました。幼い頃は学校に通っていましたが、様々な事情により途中で退学せざるを得なくなり、読み書きができる程度の基本的な学力しか身につけませんでした。その後は実家を手伝い、羊の世話をする牧童として過ごしました。17歳を迎える頃、幼少期から心に抱いていた修道生活への強い願いが、神からの確かな招きであると確信しました。この確信に基づき、1635年の春にフランシスコ会に入会し、修練者として厳しい霊的な修行に励みます。そして翌年の1636年5月18日、彼は正式に修道誓願を立て、フランシスコ会の修道士となりました。

修道士としての献身

修道士となったカルロは、生涯を通じて模範となる信仰生活を送りました。イタリア各地のフランシスコ会修道院を転々としながら、長上（修道院長などの指導者）から命じられる様々な役職や役割を、常に忠実に果たしました。彼は非常に敬虔なキリスト者であり、聖母マリアへの特別深い崇敬の念を抱いていました。自己を律するための厳しい苦行も厭わず、霊的な戦いにおいては悪魔からの誘惑や攻撃に苦しみながらも、それを信仰の力で退け、神への信頼を揺るぎないものにしていきました。彼の生涯には神秘的な出来事も含まれ、例えば有名な聖女であるアビラのテレサの出現を受けたとされる体験も伝えられています。

著書と神秘体験

正式な学問を十分に修めなかったにも関わらず、カルロは信仰に関する重要な著書を幾つか残しています。特に1642年から1646年にかけて、そして1653年から1668年にかけて執筆された『キリスト信者の模範』や自身の『自叙伝』といった著作は、その霊的な深さや優れた文筆力によって、当時の知識ある神学者たちをも驚かせました。また、彼の生涯は神秘的な恵みにも満たされていました。ある時、ミサに参列している最中に、祭壇から発せられた不思議な光が彼の胸を貫き、キリストの受難を示す「聖痕」が現れたと伝えられています。この傷跡は一時的に消えましたが、彼の死後に再び現れたとされています。これらの神秘的な出来事や、彼の徳高い生活は、多くの人々の尊敬を集めることとなりました。

晩年と列聖の栄誉

1669年12月31日、カルロは重い病に臥しました。そして、新年の始まったばかりの1670年1月6日、彼は静かにこの世を去り、神のもとへと帰りました（カトリック教会では「帰天」と表現されます）。彼の死後、カルロの執り成しを求める人々の間で、多くの病気治癒や困難からの解放といった奇跡が報告されるようになりました。教会は、彼の生涯における英雄的な徳とこれらの奇跡の報告を認め、列福・列聖に向けた調査を開始しました。1771年に列福調査が始まり、1882年1月には時のローマ教皇レオ13世によって正式に列福（福者として認められること）されました。続く列聖は、1958年に教皇ピウス12世によって行われる予定でしたが、教皇の急逝により延期されました。しかし、翌1959年、新たに選出された教皇ヨハネ23世によって、ついにセッツェのカルロはカトリック教会の聖人の列に加えられ、列聖されました。彼の生涯と霊的な遺産は、今日でも多くの信徒に感銘を与え続けています。

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