セプティミウス・オダエナトゥス

セプティミウス・オダエナトゥスは、ローマ帝国の東方属州を統括し、後のパルミラ帝国の原型を作った人物です。彼の拠点としたパルミラは、当時、東西交易の要衝として繁栄していました。氏族名は「オダエナトゥス」の他、「オデナトゥス」「オーデナサス」とも表記されます。

生涯

オダエナトゥス一族は、セウェルス朝時代にローマ市民権を得て、190年代にはパルミラに移住したと考えられています。彼は260年、サーサーン朝がウァレリアヌス帝を捕虜とした頃には、シリア属州を中心としたローマ東方属州で既に大きな影響力を持っていました。当初、彼はサーサーン朝のシャープール1世とも交渉を持っていたとされています。

ウァレリアヌスの息子ガッリエヌスが帝位を継承すると、ローマ帝国は20人以上の皇帝僭称者が現れるなど、混乱の極みに達します。オダエナトゥスは、ガッリエヌスを支援する道を選び、僭称者の一人であるティトゥス・フルウィウス・ユニウス・クィエトゥスを討伐しました。彼は自らの私兵を率いてガッリエヌスに味方し、その信頼を得て東方属州の防衛を一任されることになります。

オダエナトゥスは、その生涯においてローマ帝国からの独立を宣言し、王位に就くことはありませんでした。しかし、当時のローマ帝国は、北方からの異民族の侵入や、西方属州の割拠（ガリア帝国）によって危機的な状況にあり、事実上、オダエナトゥスはローマとは一線を画した半独立状態を築いていたと言えるでしょう。

267年、オダエナトゥスはゴート族討伐の出征前夜、宴席で甥のマエオニウスによって暗殺されました。同時に、彼の息子ヘロディアヌスも殺害されています。この暗殺劇は、後妻であるゼノビアが仕組んだとも言われていますが、真相は不明です。オダエナトゥスの死後、ゼノビアは幼い息子ウァバッラトゥスを後継者に据え、自らが実権を握り、パルミラ王国を拡大していきます。

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