セララン兵営事件

セララン兵営事件とは

1942年9月初旬、シンガポールのチャンギー捕虜収容所で発生した事件です。日本軍は、脱走を試みた連合軍捕虜への見せしめとして、4名を銃殺しました。さらに、約1万5000人の捕虜を、収容能力を大幅に超えるセララン兵営へ移送し、脱走しない旨の誓約書への署名を強要するという、非人道的な行為を行いました。この事件は、戦後、イギリス軍によって裁かれ、戦争犯罪として認定されました。

事件の背景

1942年2月15日、マレー半島で日本軍に降伏した連合軍兵士5万人以上が捕虜となり、チャンギーなどの収容所に収容されました。同年9月、捕虜収容所の管轄が陸軍省俘虜情報局に移り、福栄真平少将が馬来俘虜収容所の所長に就任。直後、ブキティマ収容所から4人の捕虜が脱走を試み、後に再収容されました。

事件の経過

「捕虜宣言」の拒否と移動命令

福栄少将は、チャンギー収容所の連合軍捕虜を率いていたE.B.ホウムズ大佐に、捕虜全員への脱走しない旨の誓約書署名を要求しました。しかし、ホウムズ大佐はこれを拒否。その翌日、傷病者を除く約1万5000人の捕虜に対し、セララン兵営への即時移動が命じられました。

セララン兵営は、かつて900人弱が収容されていた場所で、約1万5000人の捕虜が押し込められることになりました。食糧や水は不足し、衛生環境も劣悪で、捕虜たちは過密状態の中で生活を強いられました。それでも、ホウムズ大佐は「捕虜宣言」への署名を拒否し続けました。

脱走者の銃殺

同日、収容所からの脱走を企てた英濠軍の軍人4名が、海岸で銃殺されました。この処刑には、ホウムズ大佐と各区域の統率者も立ち会いを命じられました。4人の捕虜は、目隠しをされないまま、銃殺されました。さらに、岡崎中尉は連合軍の将校に対し、この処刑を見て部下に脱走しない旨の署名を命じるようにと伝えました。この処刑は、軍法会議を経ない、見せしめとしての処刑でした。

飢餓作戦と事件の終息

処刑後も、捕虜たちは署名を拒否し続けましたが、食糧はさらに減らされました。3日目の夜、日本軍は病院の感染症患者5000人をセララン兵営に送ると通告。ジフテリアが流行し、衛生環境も悪化していたため、捕虜たちは署名を決意。ホウムズ大佐が全員を代表して署名したことで、この事件は終息しました。

その後の展開

福栄少将による「捕虜宣言」の強要は、他の収容所でも行われており、当時の状況から、脅迫下での署名は避けられないと判断されました。

裁判

戦後、ワイルド少佐による戦犯調査により、セララン兵営での事件が明るみになりました。福栄少将は戦犯容疑者第1号として召喚され、イギリス軍シンガポール裁判で裁かれることになりました。

公判

裁判では、福栄中将が、捕虜に脱走しない旨の宣誓文を書かせようとしたこと、1万5000人の捕虜をセララン兵営に移動させる虐待を行ったこと、さらに、捕虜4人を殺害したことが戦争犯罪であるとして起訴されました。

福栄中将は有罪となり、銃殺刑の判決が下されました。

確認

福栄中将は、東京の陸軍省の命令に従ったに過ぎないと主張。さらに、捕虜の収容はホウムズ大佐の示唆によるもので、処刑は部下が独断で行ったものだと主張しました。しかし、ワイルド大佐の報告により、福栄中将の主張は退けられ、判決が確定しました。

処刑

1946年4月27日、福栄中将は、かつて4人の捕虜が銃殺された場所で銃殺刑に処されました。

事件が示す教訓

セララン兵営事件は、戦争における非人道的な行為と、その責任を問うことの重要性を示す事件です。この事件を通じて、国際法や人道精神の重要性を改めて認識する必要があります。

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