福栄真平

福栄真平（ふくえ しんぺい）

福栄真平は、1890年1月14日に生まれ、1946年4月27日に亡くなった日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将で、正四位勲一等功四級を授与されました。

生い立ちと初期の軍歴

実業家である福栄行賢の息子として生まれた福栄は、開成中学校を卒業後、陸軍士官学校に進みました。1911年5月に陸軍士官学校（23期）を卒業し、同年12月に歩兵少尉に任官され、歩兵第3連隊に配属されました。その後、1923年11月には陸軍大学校（35期）を卒業し、着実に軍人としてのキャリアを積んでいきました。

中堅将校としての活動

1925年5月、参謀本部付勤務となり、参謀本部員を務めた後、1927年7月に歩兵少佐に昇進しました。1928年3月には歩兵第2連隊大隊長に就任し、近衛師団参謀を経て、1931年8月には歩兵中佐に進級し、再び歩兵第3連隊に配属されました。1932年8月には近衛歩兵第1連隊付（武蔵高校配属将校）となり、参謀本部員兼軍令部員、関東軍交通監督部員を歴任し、1936年8月に歩兵大佐に昇進しました。1937年10月には歩兵第63連隊長に着任し、日中戦争に出征しました。

将官としての活動と太平洋戦争

1939年3月、福栄は陸軍少将に進級し、留守第16師団司令部付となります。1940年2月には歩兵第15旅団長に就任し、太平洋戦争開戦を迎えました。1942年7月には馬来俘虜収容所所長となり、同年12月には陸軍中将に進み、第66独立歩兵団長に就任しました。1943年6月には東京湾要塞司令官に異動し、1944年6月には第102師団長に任命され、同年10月に師団とともにレイテ島へ派遣され、レイテ決戦に参加することになりました。

レイテ戦とセブ島への撤退

第102師団はビサヤ諸島警備旅団を再編した部隊であり、訓練や装備が十分ではありませんでした。福栄自身も、本来の任務ではないレイテ戦には積極的ではありませんでした。日本軍の敗色が濃厚となる中、12月下旬、第35軍の後方参謀から、師団参謀長への私信でセブ島への帰還が一方的に通告されました。この事態を知った第35軍司令官の鈴木宗作中将は、師団司令部のセブ島帰還を命じる文書を出し、独断行動とならないようにしました。しかし、師団側はこの命令に対して連絡将校すら派遣せず、参謀長の私信で対応し、さらに文書に記載のない護衛大隊を付けて、1945年1月5日に丸木舟でセブ島への渡航を強行しました。渡航は困難を極め、福栄はゲリラからの銃撃で負傷し、セブ島に上陸できたのは3日後でした。全10隻のうち、到着できたのは福栄の乗船を含む2隻のみでした。鈴木中将は、無断で護衛部隊を動員した師団の行動に激怒し、福栄の指揮権を停止し、待機を命じました。その後、遡及して「重謹慎30日」の処分を与え、指揮権を復帰させました。大岡昇平は、この一連の出来事について「惨憺たる敗戦にも拘らず、軍司令官と兵団長との間で、インパールのような決裂が起っていないのは、鈴木司令官の、俊敏さはなくても、穏健な統制の結果といえるのである」と評価しています。

戦後

その後、福栄はセブ島に駐留したまま終戦を迎えました。戦後、セララン兵営事件で戦犯容疑により逮捕され、死刑判決を受けました。1946年にシンガポールのチャンギー刑務所で銃殺刑が執行されました。墓所は青山霊園にあります。

栄典

1944年8月、勲一等瑞宝章を受章しました。

参考文献

秦郁彦（編）『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
大岡昇平『レイテ戦記』 4巻、中央公論新社〈中公文庫〉、2018年7月25日。

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