セル (雑誌)

学術雑誌『セル』の概要

『セル』（英語：Cell）は、アメリカのセル出版（エルゼビア社傘下）が発行する科学専門誌で、1974年に創刊されました。隔週刊として発行されるこの雑誌は、医学、生化学、分子生物学を含むライフサイエンス分野において、世界的に権威ある学術雑誌として知られています。

高いインパクトファクター

『セル』はその重要性を示すための指標として用いられるインパクトファクターが非常に高く、2021年には66.850を記録しました。この数値は、他の著名な科学雑誌である『ネイチャー』や『サイエンス』と並んでおり、これら3誌は総称してCNSと呼ばれています。『セル』には、嗅覚受容体の発見やテロメアの機能に関する研究、iPS細胞の開発を扱った論文など、ノーベル生理学・医学賞に結び付いた重要な研究が多く掲載されています。これらの論文は、医学史や科学史においても語り継がれるものです。

オープンアクセスの採用

2005年から、『セル』は遅延型のオープンアクセス（delayed open access）方式を採用しています。この方式では、雑誌に掲載された論文は出版から12ヶ月後に無料で公開されることとなっています。また、1995年までさかのぼる過去の論文もインターネット上で利用可能です。この取り組みは、研究者だけでなく多くの人々が最新の科学情報にアクセスできる環境を提供することを目指しています。

独自のアプローチ

特筆すべきは、2007年9月7日付の表紙に日本の漫画家・荒木飛呂彦のイラストを採用したことです。このアプローチにより、通常の学術的な読者層に加えて、異なる領域からも関心を引き起こし、さらなる注目を集めました。アートと科学の融合は、研究成果を一般の人々に伝えるための新しい手法となりました。

姉妹紙の存在

『セル』の影響力に伴い、20世紀末からライフサイエンスの細分化が進み、各専門分野に特化した姉妹紙が続々と誕生しました。これらの姉妹紙はそれぞれの分野におけるトップジャーナルの一つとされています。

主要な姉妹紙一覧

• - Neuron (1988年創刊): 神経科学に焦点を当てた研究を発表。
• - Immunity (1994年創刊): 免疫学の最新の研究成果を紹介。
• - Molecular Cell (1997年創刊): 細胞生物学と分子生物学に関する論文を掲載。
• - Developmental Cell (2001年創刊): 発生生物学の分野に特化。
• - Cancer Cell (2002年創刊): 癌研究に関する高品質な論文を提供。
• - Cell Metabolism (2005年創刊): 代謝に関する最新の知見を届ける。
• - Cell Host & Microbe (2007年創刊): 感染症と微生物学の研究。
• - Cell Stem Cell (2007年創刊): 幹細胞研究と再生医学を対象。

また、生物学全般に焦点を当てた姉妹紙として、Current Biology (1991年創刊) や Cell Reports (2012年創刊) もあります。これらはそれぞれ、特定の分野を対象にした中堅誌ながらも、研究者に有意義な情報を提供しています。さらに、2020-2021年には、Cell Reportsのカバーしきれない分野を対象とするCell Reports Physical ScienceやCell Reports Medicine、Cell Reports Methodsが創刊され、より幅広い研究成果が発表されています。

まとめ

『セル』は、ライフサイエンス分野の進展を促進し続ける主要な学術雑誌であり、その影響力とアクセスのしやすさにより、科学研究の発展に寄与しています。姉妹紙の存在もまた、さまざまな専門分野における新たな発見や研究の進展に貢献していることが伺えます。

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