セレール族

セレール族：セネガルの豊かな文化を彩る民族

セネガルで2番目に大きな民族集団であるセレール族は、その歴史と文化において独特のアイデンティティを有しています。セネガルの中西部、シヌ＝サルーム地方を中心に居住し、ガンビアやモーリタニアにもその居住区は広がっています。彼らスーダン系民族は、農業と漁業を主な生業として、代々この地で暮らしてきました。

歴史：王国と国家連合の興亡

セレール族の歴史は古く、10世紀から13世紀にかけて、北方地域からセネガル中央部へと移住してきたと考えられています。彼らは独自の王国を築き上げ、その歴史は幾多の興亡を繰り返しました。シヌ王国（1350年-1969年）、サルーム王国（1494年-1969年）、バオル王国（750年-1896年）といった独立王国が栄え、また、セネガンビア連邦（1982年-1989年）のような国家連合も形成されました。これらの歴史的経緯は、セレール族の社会構造や文化に深い影響を与え、今日にいたるまでその痕跡を見ることができます。

宗教：森羅万象を司るローグとカトリック信仰

セレール族は、独自の宗教観を持っています。彼らは『空』を意味するローグを最高神として、森羅万象に宿る神々を信仰してきました。伝統的な宗教行事は生活のあらゆる場面に深く根付いており、彼らの日常生活に大きな影響を与えています。興味深いのは、他の民族と比較して外国からの宗教の浸透に抵抗を示し、イスラム化が比較的遅れた民族であるという点です。そのため、現在ではカトリックを信仰する人が多くを占めています。セネガル初代大統領のレオポルド・セダール・サンゴールもまた、セレール族出身のカトリック信者でした。

言語：多様な方言とセレール語

セレール族の言語は、セレール語と呼ばれます。しかし、セレール語は単一言語ではなく、いくつかの異なる方言から構成されています。大きく分けると、セレール＝シヌ、セレール＝ニョミンカ、そしてキャンガン語に分類されるサーフェン、ンドゥット、ノーン、パロル、レハルの5つのグループに分類されます。セレール＝シヌはシヌ＝サルーム地域を中心に広く話され、セレール＝ニョミンカはサルーム・デルタ地域の島々で話されています。キャンガン語はセレール＝シヌとは大きく異なる言語系統に属し、それぞれの地域で独自の発展を遂げてきました。セネガルにおける主要言語であるウォロフ語を第二言語として話すセレール族も多く、都市部ではウォロフ語を第一言語とするセレール族も少なくありません。

文化：ウォロフ族との共存と独自のアイデンティティ

セネガル第二の民族として、セレール族はエネルギッシュで支配的なウォロフ族（イスラム教徒が多い）の影響をある程度受けてきました。しかし、彼らは独自の文化と伝統をしっかりと守り続けています。セネガル社会において、セレール族は独自の文化を維持しながら、他の民族と共存し、多様な社会を形成しています。彼らが築き上げてきた歴史、信仰、言語、そして文化は、セネガルの多様な文化遺産を彩る重要な要素となっています。今後も、セレール族の文化と歴史が、セネガル社会に貢献していくことが期待されます。

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