センウズモドキ

センウズモドキ（川烏頭擬）

センウズモドキ（学名：Aconitum jaluense subsp. iwatekense）は、キンポウゲ科トリカブト属に分類される多年草の一種です。日本固有種であり、本州の東北地方から関東地方、中部地方にかけて分布し、山地の林縁に生育します。コウライブシを基本種とする亜種とされています。

特徴

形態: 地下には小さな塊根を持ち、茎は斜めに伸びて上部で大きく垂れ下がります。草丈は50cmから150cm程度。
葉: 根元の葉は開花時期には枯れており、茎の中部につく葉は五角形状の腎円形で、3つに深く切れ込んでいます。葉の表面は光沢がありません。
花: 8月から10月にかけて、青紫色（まれに黄白色や白色）の花を咲かせます。花序は総状または散房状で、上から下に向かって開花します。花弁に見えるのは萼片で、上萼片が特徴的な兜状をしています。
その他: 果実は直立する袋果です。

有毒性

センウズモドキは有毒植物であり、全草に毒性があります。特に根や種子に毒成分が多く含まれています。誤って摂取すると、神経麻痺や呼吸困難などの症状を引き起こす可能性があります。

分布と生育環境

日本固有種であり、本州の東北地方北部（青森県）から関東地方の沿岸山地（茨城県）、群馬県、中部地方の内陸山地（長野県）に分布しています。山地の林縁に生育し、やや湿った環境を好みます。

名前の由来

和名「センウズモドキ」は、同じトリカブト属の「センウズ（川烏頭）」に似ていることに由来します。「モドキ」は「擬き」を意味し、センウズに似ているが異なる植物であることを表しています。亜種名 iwatekense は、岩手県にちなんで名付けられました。

分類

センウズモドキは、トリカブト属の中でも、花弁の形や花の咲き方などの特徴から、特定のグループに分類されています。近縁種との識別点としては、葉の切れ込み方や花柄の毛の有無などが挙げられます。

種の保全状況

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類（VU）に指定されており、絶滅の危険性が増大しています。生育地の破壊や採取などにより、個体数が減少しています。都道府県によっては、より深刻な状況にある地域もあります。

保護の必要性

センウズモドキは、日本の固有種であり、貴重な植物の一つです。自生地の保護や適切な管理を行い、種の存続を図る必要があります。また、有毒植物であるため、むやみに採取したり、口にしたりしないように注意が必要です。

類似種との比較

センウズモドキは、同じトリカブト属の植物とよく似ていますが、葉の形や花の構造、毛の生え方などで区別できます。特に、ヤマトリカブトやオンタケブシなどの近縁種との識別には注意が必要です。

サンチュウトリカブトとの違い

群馬県特産のサンチュウトリカブトは葉の裂け方や花柄に開出毛が生える点で本亜種に似るが、花弁の舷部が膨大しないこと、距の先端が強く巻くこと、上萼片の嘴が短いこと、果実がより小型であること等で区別されます。

基本種コウライブシについて

基本種のコウライブシは、絶滅危惧IA類(CR)に指定されており、国内希少野生動植物種に指定されています。環境大臣の許可なく採取や損傷することは禁止されています。

センウズモドキは、美しい花を咲かせる一方で、強い毒性を持つ植物です。自然の中で見かけることがあっても、安易に触れたり、口にしたりしないように注意しましょう。そして、この貴重な植物を守るために、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があります。

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