センサク・ムアンスリン

センサク・ムアンスリン（Saensak Muangsurin、1950年8月13日 - 2009年4月16日）は、タイの元プロボクサーであり、その破天荒なキャラクターと驚異的な強さで世界中のファンを魅了しました。本名はブンソン・マンシリ（Boonsong Mansri）です。彼はボクシング史上最短となるわずか3戦目で世界王座を奪取するという、前人未到の記録を打ち立てました。元WBC世界スーパーライト級王者として知られています。

ムエタイからボクシングへ

センサクは元々ムエタイ選手としてキャリアをスタートさせ、ルンピニー・スタジアムのスーパーライト級チャンピオンに輝きました。アマチュアボクシングでも1973年の東南アジア競技大会で金メダルを獲得するなど、その才能を早くから開花させていました。1974年にプロボクシングに転向すると、マネージャーが3戦で世界王座を奪取すると宣言。その言葉通り、デビュー戦で世界ランク6位の強豪ルディ・バロを1回KOで下し、世界を驚かせました。続く2戦目では、日本の強豪ライオン古山を7回KOで破り、その勢いは増すばかりでした。そして3戦目、ペリコ・フェルナンデスを8回KOで下し、宣言通りプロ転向からわずか3試合で世界タイトルを獲得するという偉業を成し遂げたのです。

世界王者としての活躍

世界王者となったセンサクは、その強さをリングで証明し続けました。初防衛戦では、ライオン古山を再び迎え撃ち、見事勝利。しかし、2度目の防衛戦では、スペインのミゲル・ベラスケスとの試合で、ダウンを奪うなど圧倒的に試合をリードしながらも、4回終了間際にアクシデントが発生。ベラスケスが反則負けという結果になり、一度は王座を失うことになりました。しかし、WBCがリマッチを承認し、4ヶ月後の再戦ではベラスケスを破り、王座に返り咲きました。その後、7度の防衛に成功しましたが、1978年12月30日、金相賢との試合で13回KO負けを喫し、王座から陥落。1981年4月5日の試合を最後に、現役を引退しました。

その他のエピソード

センサクは、ムエタイ選手としても並外れた強さを誇っていました。ボクシングで古山や石松を相手に防衛戦を行う以前に、ムエタイ王者として来日し、後の全日本ライト級王者である玉城良光に3回KO勝ちを収めています。この試合では、パンチを得意とする玉城に対し、センサクは得意の膝蹴りで一蹴。玉城は試合後、内臓破裂で緊急手術を受けるほどの大ダメージを負いました。また、プロボクシングでの戦績に見られるように、センサクは驚異的なハードパンチャーであり、ムエタイやアマチュアボクシングでもKO勝ちを量産していました。

日本での2度目の防衛戦では、蔵前国技館でガッツ石松の挑戦を6回KOで退けました。試合後には「精力が余って眠れない」と言いながら、ソープランド（当時は「トルコ風呂」）を3軒もハシゴしたという逸話も残っています。さらに、試合のインターバルで口に含んだ水を飲み込んでしまうなど、その型破りな一面でも知られていました。



私生活では、現役時代にタイの有名女優と結婚し、男児をもうけましたが後に離婚。互いに再婚しています。引退後には周囲に担ぎ上げられて選挙に出馬しましたが落選。晩年は健康状態に恵まれず、経済的にも不遇な状況のまま2009年4月16日にこの世を去りました。

センサクの戦績

* プロボクシング：20戦14勝 (11KO) 6敗

センサク・ムアンスリンは、その強烈なパンチと独特なキャラクターで、ボクシング史にその名を刻んだ伝説的な選手として、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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