Vブレーキ

Vブレーキ：自転車用リムブレーキの進化形

Vブレーキは、自転車に使用されるリムブレーキの一種です。ワイヤー式のリムブレーキの中でも特に強力な制動力を持ち、マウンテンバイクを中心に広く普及しています。その名前は、逆ハの字型に開いたブレーキアームがアルファベットの「V」を思わせることに由来します。シマノ社が1990年代後半に製品化し、日本国内では一般名詞として定着しました。JIS規格では「カンチレバーV形」と分類され、英語ではLinear PullまたはDirect Pull Cantilever brakeとも呼ばれます。

Vブレーキの構造と仕組み

Vブレーキは、2本のブレーキアームをフロントフォークやシートステイに固定することで構成されます。ブレーキワイヤーはアーム上端を連結し、リードパイプと呼ばれる部品を介してワイヤーの向きを変えます。この部分は泥や雨水の浸入を防ぐため、エラストマー製のブーツで保護されています。

ブレーキレバー操作によってワイヤーが引き込まれ、アームの間隔が狭まります。これにより、アームの中央に取り付けられたブレーキシューがリムに押し付けられ、制動力が発生します。Vブレーキはてこの原理を利用しており、他のブレーキに比べてワイヤー作動量が多いため、専用のブレーキレバーが必要となる場合が多いです。

強力な制動力を得られる一方で、ブレーキ台座への強い反力が発生します。そのため、馬蹄型の部品であるブレーキブースターを追加して台座の開きを防ぐ構造が用いられることもあります。また、左右のパッドが平行に動くパラレルリンク機構を持つVブレーキもあり、ブレーキタッチの向上や調整の容易化に貢献しています。ただし、構造が複雑になり、重量も増加します。

Vブレーキのメリットとデメリット

メリット

強力な制動力: 長いアームによるてこの原理と、効率的な力の伝達により、従来のカンチレバーブレーキよりも強力な制動力を発揮します。
ワイヤー取り回しの容易さ: カンチレバーブレーキのように、アウターワイヤー用の台座が不要です。
メンテナンスの容易さと低価格: 部品数が少なく、メンテナンスが容易で、価格も比較的安価です。
輪行の容易さ: ディスクブレーキと比べて、輪行時の取り扱いが容易です。

デメリット

リムの状態への依存: 他のリムブレーキと同様に、リムの汚れや歪みの影響を受けやすく、ブレーキシューとリムの摩耗も発生します。
急ブレーキ時のリスク: 強力な制動力は、急ブレーキ時に車輪ロック、ジャックナイフ、スリップなどを引き起こす可能性があります。

パワーモジュレータ

Vブレーキの急激な制動力を軽減するために、パワーモジュレータが用いられます。これはブレーキワイヤーの中間に組み込まれ、内部のスプリングによってブレーキ力の立ち上がりを緩やかにします。ブレーキレバーを引くと、最初は弱い力でブレーキシューがリムに接触し、徐々にブレーキ力が強まる仕組みです。シマノ社では、パワーモジュレータを組み込んだVブレーキも販売しています。

シマノ製の一部ブレーキレバーはVブレーキとカンチレバーブレーキの両方に対応しますが、Vブレーキにそのまま使用すると制動力が強すぎるため、パワーモジュレータとの併用が推奨されています。ただし、パワーモジュレータはタイヤロックを完全に防止するものではなく、あくまで急ブレーキ時のリスク軽減を目的とした装置です。

ミニVブレーキ

ロードバイク用のブレーキレバーで操作できるように、アームの長さを短くしたミニVブレーキ（ショートVブレーキ）も存在します。クロスバイクなどにドロップハンドルを取り付ける際に使用されることが多いですが、ワイヤーの位置が低くなるため、太いタイヤとの組み合わせは難しい場合があります。テクトロ社のRX3、RX5などが代表的な製品です。

まとめ

Vブレーキは強力な制動力を誇る一方、急ブレーキ時のリスクも伴います。パワーモジュレータなどの工夫によって安全性は向上していますが、使用方法を理解し、安全に走行することが重要です。また、リムの状態にも注意が必要です。

もう一度検索