セントエルモの火

セントエルモの火

セントエルモの火（セントエルモのひ、英: St. Elmo's fire）は、嵐や悪天候の状況下において、船のマストや航空機の先端が発光する自然現象です。この現象は静電気によるものであり、雷雲が発生する際に特に強く観察されます。時には、指先や髪の毛の先端にも同様の発光が見られることがあります。

歴史的背景

この現象の名称は、船乗りの守護聖人である聖エルモ（エラスムス）に由来します。伝説によれば、彼は嵐に見舞われた船上で神に祈り、その際に帆柱の先端に青い炎が灯ったとされています。このため、聖エルモの火は航海者たちにとって重要な象徴となりました。

セントエルモの火は、多くの文学作品や学術書にも登場します。例えば、カエサルの「アフリカ戦記」や、大プリニウスの「博物誌」、メルヴィルの小説「白鯨」などで言及されており、古代から近代に至るまで人々の興味を引いてきました。大プリニウスは、発光現象について古典期のギリシャでは「ヘレナ」や「カストルとポルックス」と呼ばれていたことを記述しています。これは、航海中に光が現れたことで嵐が収まったという神話に基づいています。

異称と科学的解明

セントエルモの火は、さまざまな呼称でも知られています。英語では「St. Elmo's light」とも呼ばれ、また「corposant」（コルポサント）という別名も持ちます。これはポルトガル語とラテン語に由来し、「聖体」という意味を含んでいます。また、学術的には「檣頭電光」とも称されることがあります。

物理的には、尖った物体の先端でコロナ放電が発生し、青白い光を放つ仕組みとなっています。放電によって先端が負極または正極の場合で形状が異なり、時には「シュー」という音を伴うこともあります。1750年には、ベンジャミン・フランクリンがこの現象に関する研究を行い、雷雨の際に尖った鉄棒が発光することを明らかにしました。

現代における目撃例

現代においても、セントエルモの火は目撃されています。例えば、ブリティッシュ・エアウェイズ9便の事故では、ガルングン山の噴煙に航空機が入った際、火山灰との摩擦でこの現象が発生し、乗組員の目撃証言があります。このような実際の目撃例があることから、セントエルモの火は依然として人々にとって興味深い自然現象であり続けています。

関連項目

この現象は雷や放電、そして摩擦帯電と深く関連しており、様々な研究対象とされています。セントエルモの火は不思議な発光現象であり、多くの伝承が語り継がれる中、科学的にも解明が進められています。

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