セントポーリア

セントポーリアについて

セントポーリア（学名：Saintpaulia）は、イワタバコ科に属する多年草で、その愛らしい姿から世界中で親しまれています。一般的には「アフリカスミレ」という名前でも知られていますが、スミレ科の植物とは異なる種類です。ケニア南部とタンザニア北部の山地に自生し、その美しい花と多様な姿から多くの園芸品種が作り出されてきました。

特徴

セントポーリアは、ロゼット型とトレイル型の2つの成長形態があります。ロゼット型は、葉が放射状に広がるタンポポのような形状をしており、トレイル型は、茎が長く伸び、地面を這うように成長します。

花は左右対称の合弁花で、上唇が2つに、下唇が3つに分かれており、下唇の方が大きいです。花の色は、紫色や薄紫色が基本ですが、園芸品種では赤、青、白など、様々な色があります。雄しべは2本で、黄色い葯を持ち、花の中心から突き出ています。

葉は、楕円形または卵形で、縁は滑らかなものや鋸歯状のものがあります。また、葉には毛が生えていますが、その形状や長さは種類によって異なります。

生息環境

セントポーリアは、冷涼な日陰で、湿度の高い場所を好みます。自生地では、渓谷沿いの断崖の湿った岩壁や、熱帯雨林の苔むした樹木に着生しています。

発見の歴史

セントポーリアが最初に発見されたのは19世紀後半です。

1884年：イギリスの副領事ジョン・カークがザンジバルで採取しましたが、標本が不十分で記載には至りませんでした。
1887年：牧師W.E.テイラーがケニア南東で採取しましたが、これも標本が不十分でした。
1891年：ドイツ人のフォン・セントポール男爵がウサンバラ山地でセントポーリアを発見し、ドイツの植物園に送りました。植物園長のヘルマン・ヴェンドランドによって新属新種として記載され、発見者にちなんで Saintpaulia ionantha と命名されました。

原種

セントポーリアの原種は20種以上が確認されており、その多くがタンザニアのウサンバラ山地に分布しています。以下に代表的な原種をいくつか紹介します。

*イオナンタ (Saintpaulia ionantha): 最初に発見された種で、通常は紫色の花を咲かせます。白い花を咲かせる変異種も存在します。種小名のionanthaは、ギリシャ語で「スミレのような」という意味です。
*インコンスピキュア (S. inconspicua): タンザニアのウルグル山地に生息しています。
*インターメディア (S. intermedia): タンザニアのウサンバラ山地東部に生息しています。
*オービキュラリス (S. orbicularis): タンザニアのウサンバラ山地西部に生息しています。
*グランディフォーリア (S. grandifolia): タンザニアのウサンバラ山地西部に生息し、種小名が示すように大きな葉が特徴です。
*コンフューサ (S. confusa): タンザニアのウサンバラ山地とヌグル山地に生息しており、以前は他の種と混同されていました。
*テイテンシス (S. teitensis): ケニアのテイタ丘陵に生息しています。
*ディプロトリカ (S. diplotricha): 葉に多数の毛が生えているのが特徴です。

園芸品種

セントポーリアは、その多様な花色や形から多くの園芸品種が作出されています。その数は2万種から3万種とも言われており、花の色、形、咲き方、葉の形など、バラエティに富んでいます。

花色：赤、紫、青、白などがあり、覆輪、アイ、ストライプ、スプラッシュなどの模様が入るものもあります。

花形：プレーン形、スター形、フリル形などがあります。

咲き方：シングル咲き、セミダブル咲き、ダブル咲き、フルダブル咲きなどがあります。

葉の形：プレーン形、スプーン形、フリル形、ウェーブ形などがあります。

園芸品種は、その特徴によっていくつかの種類に分類されます。

普通種: 原種を元に作出された、ロゼット状に成長するタイプです。
ミニチュア種、セミミニチュア種: 小型に改良されたタイプです。
アルビノ種（斑入り種）: 葉に白やピンクの斑が入るタイプです。
トレイル種: つる状に伸びるタイプです。
ラプソディ種: ドイツのホルトキャンプ社が作出した品種です。
バレー種: アメリカのフィッシャーで作出されたラプソディ種の改良種です。
オプティマラ種: 1970年代にアメリカで作出された品種です。
* メロディー種: 1980年代にアメリカのサニーサイドナーセリーが作出した品種です。

日本における栽培

日本では、1970年代からラプソディ種が販売され人気を集めました。川上敏子氏は、日本の気候に合わせた室内栽培法を考案し、セントポーリアの普及に大きく貢献しました。

セントポーリアは、その美しい花と育てやすさから、家庭で愛される観葉植物として広く親しまれています。多様な品種の中から、自分好みのセントポーリアを見つけて、その美しい花を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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