セントローレンス海路
セントローレンス海路について
セントローレンス海路（Saint Lawrence Seaway）は、大西洋と五大湖のスペリオル湖を結ぶ航行可能な運河のネットワークです。この海路はモントリオールからエリー湖までの区間にわたり、主にウェランド運河と五大湖水路を含んでいます。名称は、オンタリオ湖から大西洋に至る水路としての役割を果たすセントローレンス川に由来しています。実際には、この海路は連続した運河ではなく、多くの閘門や天然の水路を回避する短い水路が組み合わさって構成されています。
歴史的背景
セントローレンス海路の建設に至るまでには、長い歴史があります。1862年には、すでにセントローレンス川に存在した閘門がありましたが、当時の閘門は大型船舶には不十分でありました。1909年に海路の建設のアイデアが提案されましたが、アメリカの鉄道や港湾業界からの強い反発があり、この計画はなかなか進展しませんでした。水力発電も当初の目的の一つとして考えられ、この計画の推進が試みられましたが、様々な理由から実現には至らなかったのです。しかし1954年、カナダ政府はこのプロジェクトを単独で進める意思を表明し、その後の建設に合意が得られました。
工事には4億7000万米ドルが費やされ、そのうち約3億3620万ドルがカナダ政府によって負担されました。開通式典にはエリザベス2世女王とアイゼンハワー大統領が出席し、公衆に向けての演説を行い、その後短い航海が行われ、正式にセントローレンス海路が開通しました。新しい海路の開通により、エリー運河は時代遅れとされ、ニューヨーク州北部の経済に影響を与える結果になりました。
船舶のサイズと運用
セントローレンス海路とウェランド運河では、閘門のサイズが通航可能な船の大きさを制限しています。これらの閘門のサイズは、全長約233メートル、全幅約24メートル、喫水が約9.1メートルです。実際に通航できる船はこのサイズよりも若干小さく、通常「シーウェイマックス」と呼ばれる最大サイズに従って設計されています。このため、五大湖で建造された大型の貨物船は、海路を通じて海に出ることはできません。
水深についてもセントローレンス川のような水路は、船にとっての障害となります。海路の水深はケベックより下流で約12メートル、モントリオールまでは11メートルですが、上流では8.5メートルにまで減少します。さらに、五大湖水路では水深が25メートルから27メートルと、数値はさらに浅くなることがあります。
拡張の試み
海路の選択肢が制限されているため、船舶の約10パーセントがこの海路を通行可能です。1960年代には海路の拡張提案がありましたが、その高い費用と環境への影響が懸念され、実現には至っていません。特に近年は五大湖の水位低下問題も影響しており、利用可能な船舶の数が減少しています。
用途と娯楽活動
現在のセントローレンス海路は、主にばら積み貨物の輸送に使用されています。一方で、コンテナ輸送の可能性も検討されています。具体的には、オスウィーゴからノバスコシア州へのフィーダー船によるコンテナの運搬が計画されている模様です。また、セントローレンス海路は釣り、ボート漕ぎ、スキューバダイビングなどの娯楽活動の場としても利用されています。夏季には水温が21度に達し、キャンプ感でのアクティビティが好まれています。
環境への影響
海路の建設によって生じた環境への影響としては、失われた村という悲劇があります。1958年には、オンタリオ州の10の村が水没する結果となり、これを指して「失われた村」と呼ばれています。また、海路建設によって外来生物の侵入も引き起こされ、五大湖盆地へと様々な水生生物が持ち込まれています。
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