セント・ジョージ要塞 (マドラス)

セント・ジョージ要塞

セント・ジョージ要塞は、1639年にインドのチェンナイに設立されたイギリスの交易所であり、同時に要塞の役割も果たしました。この要塞の建設は、イギリス東インド会社による貿易拡大を目的としており、当時未開の地であった場所を開発することで、さらなる入植と貿易の活性化を促進する意図がありました。

背景

イギリス東インド会社は、1600年頃よりインドでの貿易活動を開始しており、スーラトでの貿易許可を得たのが始まりでした。しかし、香辛料やその他の商品の貿易に際しては、より安全でアクセスの良い商港の必要性を感じていました。そこで、1639年にはダーマルラ・ヴェンカタ・ナーヤカという領主から、マドラスパッティナムと呼ばれる地域を買収し、そこで港と要塞の建設が始まりました。

1644年4月23日、イギリスの守護聖人であるセント・ジョージの日に要塞が完成し、名付けられたのが「セント・ジョージ要塞」です。この位置は、海と漁村に面し、商業活動の中心地としての役割を果たしました。要塞の完成により、ジョージタウンと呼ばれる新たな入植を生み出し、イギリス東インド会社の交易に大いに寄与しました。さらに、この要塞は周囲の農村を取り囲む形で発展し、現在のマドラスシティの基盤を築くこととなりました。

歴史の展開

イギリス東インド会社は、セント・ジョージ要塞を中心に、カーナティック地方へのイギリス人の入植を加速させました。また、当時フランス軍もポンディシェリーに拠点を置き、要塞に対抗しました。18世紀には、敵からの攻撃に耐えるため、要塞は6メートルの壁に強化されました。1746年から1749年にかけては、一時的にフランスの支配下に置かれましたが、アーヘンの和約によってイギリスに返還されました。

現代での役割

現在、セント・ジョージ要塞はインド・タミル・ナードゥ州の立法議会本部として機能しており、多様な輸送拠点としても利用されています。また、要塞内には資料館があり、歴代のイギリス東インド会社総督に関する写真や、英領インドの貴重な遺物が収められています。

要塞内の見どころ

セント・メアリーズ教会

この教会はインド最古の聖公会系の教会であり、1678年から1680年にかけて建設されました。中庭にはインド最古のイギリス人の墓が存在し、イギリスの将校ロバート・クライブや総督エリフ・イェールの結婚式が行われた歴史があります。セント・メアリーズ教会は東のウェストミンスター大寺院と称されることもあります。

資料館

要塞の資料館は1795年に完成し、当初はマドラス銀行の事務所として使用されました。この資料館には、インドのイギリス統治法に関する記録や、当時の武器、硬貨、勲章、軍服などが展示されています。また、ロバート・クライブが書いたインド統治法の書簡も展示されており、訪問者はイギリス領インド帝国の歴史を感じることができます。

インド総督ウェルズリーの住居

リチャード・ウェルズリーの住居内には、歴代の総督や幹部の肖像画が飾られた宴会場があります。また、コーンウォリス卿の彫像もこの場所近くに立てられており、歴史的な記念物となっています。これらの遺物は、当時のインドでの植民地支配の影響を伝える重要な証拠となっています。

セント・ジョージ要塞は、歴史的な価値が高く、観光地としても多くの訪問者を迎えています。要塞の中に保存されている文化遺産は、インドにおけるイギリスの歴史を理解するための貴重な資源となっているのです。

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