セント・パトリック教区 (グレナダ)

セント・パトリック教区は、グレナダの行政区画の一つで、グレナダ島北東部と、グレナディーン諸島に属するロンデ島、カイル島、ダイアモンド島、そしてLes Tantesといった島々を管轄しています。教区の首府はソーターズという町です。

面積は約42平方キロメートルで、2019年の推計人口は約1.1万人となっています。セント・パトリック教区は、その豊かな自然と歴史的な背景から、グレナダの中でも独特な魅力を持つ地域として知られています。

歴史を遡ると、1640年代にフランス人がこの地に入植しました。入植の過程で、先住民族であったカリブ族は過酷な運命をたどります。奴隷として扱われるか、あるいは絶滅させられるかという状況に追い込まれました。カリブ族の中には、フランスの侵略に対して抵抗した人々もいました。Kairouane酋長率いる一団（約40名）は、ソーターズ付近の崖へと追い詰められ、最終的に海へ身を投げて集団自決したという悲しい伝説が残っています。

この出来事から、フランス人は当地をソーターズ（Sauteurs）と名付けました。ソーターズはフランス語で「跳躍者たち」という意味を持ち、英語ではJumpersと翻訳されます。また、集団自決があった崖は、リーパーズ・ヒル（Leapers' Hill）と呼ばれるようになり、現在ではその出来事を追悼する記念碑が建てられています。

1763年、イギリスがグレナダを領有すると、この地域はセント・パトリック教区と改称されました。植民地時代には、農業がこの地域の主要な産業として発展しました。特に、カカオ豆やナツメグの生産が盛んで、グレナダ島全体の生産量の半分以上をセント・パトリック教区が担っていました。アーヴィンス湾（Irvin's Bay）は、本国イギリスとの貿易拠点として重要な役割を果たし、砂糖や野菜などが輸出されていました。

現代のセント・パトリック教区は、観光地としても注目されています。グレナダ島北部には美しい海水浴場が点在しており、中でもバスウェイ・ビーチ（Bathway Beach）は特に人気があります。また、チボリ近辺には火山湖であるアントワーヌ湖があり、自然愛好家にとっては見逃せないスポットとなっています。

主要な都市としては、シャンティメル (Chantimelle)、マウント・ローズ (Mount Rose)、ソーターズ (Sauteurs)、チボリ (Tivoli) などがあります。これらの都市は、それぞれ独自の文化や歴史を持ち、セント・パトリック教区の多様性を象徴しています。

セント・パトリック教区は、美しい自然、豊かな歴史、そして多様な文化が融合した魅力的な地域です。カリブ族の悲しい伝説を胸に刻みながら、この地は新たな発展を遂げようとしています。

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