カリブ族

カリブ族：歴史、文化、そして現代

カリブ族（カリブぞく、Caribs、カリナゴ族、Kalinago）は、南アメリカを原住地とするカリブ語系のインディオです。彼らは、西インド諸島、中米カリブ海沿岸、そして南米大陸に分布し、その文化や歴史は多様性に富んでいます。ヨーロッパ人が名付けた「カリブ」という呼称は、差別的であるという意見もあり、島嶼カリブが多く居住するドミニカ国では、近年「カリナゴ」という自称に置き換えられています。

カリブ族の区分

カリブ族は、地理的な分布によって大きく3つのグループに分けられます。

島嶼カリブ: 小アンティル諸島に居住していたカリブ族。コロンブス到来以前に南米から北上し、先住民のアラワク族を征服しました。好戦的な性格でヨーロッパからの入植を防ごうとしましたが、最終的には衰退し、ドミニカ島とセントビンセント島に居住地が限定されました。ドミニカ島ではカリブ族居留地が設けられましたが、現代ではドミニカ化が進み、伝統的なアイデンティティは失われつつあります。
ブラック・カリブ: セントビンセント島のカリブ族と、奴隷として連れてこられたアフリカ系黒人との混血の子孫。ベリーズ、グアテマラ、ホンジュラスなどの沿岸部に居住しています。カリブ族の文化よりも西インド諸島の黒人文化との類似性が強まっています。
* 大陸カリブ: 南アメリカに居住するカリブ族。ギアナ3国の密林奥地を中心に生活していましたが、現在は沿岸部に移動しています。島嶼カリブと比較すると移動性や好戦性は低く、狩猟民としての性格が強く、社会構造も比較的単純です。

島嶼カリブの歴史

コロンブスらスペイン人の報告により、島嶼カリブは人食い人種として認識されるようになりました。この評判から、ヨーロッパではカニバリズムという言葉が生まれました。彼らは好戦的であり、ヨーロッパからの入植を阻止するために戦いましたが、最終的には殺されたり追い出されたりして衰退しました。17世紀には、カリブ族の居住地は小アンティル諸島のドミニカ島とセントビンセント島のみとなりました。

ドミニカ島のカリブ族は、1903年にカリブ族居留地に移住させられ、1940年代には人口は約500人となっていました。1952年にはカリブ評議会が設立されましたが、1930年には警察との衝突事件が発生し、イギリス海軍が出動する事態となりました。ドミニカ島は1978年にイギリスから独立しましたが、同年にはカリブ族居留地に内部自治政府が設立されました。現在、カリブ族居留地はカリナゴ・テリトリーと呼ばれ、独自の首長が民主的に選ばれています。

グリグリ・プロジェクト

1997年、ドミニカ国のカリブ族の先祖を辿り、南米ガイアナのカリブ族と再会する「グリグリ・プロジェクト」が開始されました。グリグリとは、カリブ族の言葉でハイタカを意味し、勇気のトーテムの象徴として、古代カリブ族の戦士が尊敬した鳥です。このプロジェクトは、イギリス人芸術家とカリブ族のアーティストの出会いから生まれ、古代カリブ族の伝統的なカヌーを製作し、ドミニカ国からガイアナまで航海するという壮大なものでした。この航海の様子はドキュメンタリー映画となり、BBC放送でも放送され、大きな反響を呼びました。

カリブ族の現在

かつて好戦的で人食い族として恐れられていたカリブ族ですが、現在は農業を営み、穏和な集団を築いています。ドミニカ国では、彼らは民主的に選ばれる独自の首長を持ち、熱心なカトリック信者でもあります。しかし、イギリス式の学校教育や市場経済などの影響で、急速なドミニカ化が進み、カリブ族伝統のアイデンティティーはほとんど失われつつあります。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト|パイレーツ・オブ・カリビアン_デッドマンズ・チェスト』では、カリブ族が人食い族として描かれ、物議を醸しましたが、彼らは現代社会の中で自分たちの文化を守りながら、新たな道を歩んでいます。

カリブ族の歴史と文化は、カリブ海の多様性を象徴するものであり、その存在は今もなお、地域社会に大きな影響を与え続けています。

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