セヴェリナ・ヴチュコヴィッチ

セヴェリナ・ヴチュコヴィッチ：クロアチアの歌姫、その光と影

セヴェリナ・ヴチュコヴィッチ（Severina Vučković）は、クロアチア出身の著名な歌手・女優であり、単にセヴェリナとしても知られています。1972年4月21日に、当時のユーゴスラビア社会主義連邦共和国、クロアチア社会主義共和国のスプリトで生まれました。彼女は、その音楽キャリアと舞台での活躍、そして私生活におけるスキャンダルで、常に世間の注目を集めてきました。

音楽キャリア：ポップスターへの道

セヴェリナの音楽スタイルは、民俗音楽とキャバレーの影響を受けたポップ・ミュージックと評されます。幼少期から地元の劇場で端役を演じ、1980年代には地元の音楽祭で数々の賞を受賞。1989年にはザグレブに移り、プロの歌手としての道を本格的に歩み始めます。同年、デビューアルバム『Severina』をリリース。1990年代には、「Dalmatinka」（1993年）、「Paloma nera」（1993年）、「Trava zelena」（1995年）、「Od rođendana do rođendana」（1996年）、「Djevojka sa sela」（1998年）など、数々のヒット曲を連発し、クロアチアのポップスシーンにおける確固たる地位を築き上げました。

2001年のアルバム『Pogled ispod obrva』の成功を受け、2002年には大規模なコンサートツアー「Virujen u te」を開催。クロアチアを代表するトップ歌手としての評価を不動のものとしました。2年間の活動休止後、2004年には8枚目のアルバム『Severgreen』を発表しています。

ユーロビジョン・ソング・コンテスト：国際舞台への挑戦

2006年、セヴェリナはギリシャのアテネで開催されたユーロビジョン・ソング・コンテスト2006にクロアチア代表として出場し、「Moja štikla」を歌い上げました。結果は56ポイントで13位でしたが、楽曲がセルビア的であるとして物議を醸しました。しかし、セヴェリナ自身は、この曲がダルマチア内陸部の音楽ガンガやレレ、リイェリツァの演奏を取り入れたクロアチアの民俗音楽に基づいていると主張しました。

ESC2006以降：新たな音楽性の探求

10枚目のアルバム『Zdravo Marijo』は、ゴラン・ブレゴヴィッチをプロデューサーに迎え、2008年5月にリリースされました。先行シングルの「Gas, gas」はヒットしたものの、その音楽性や歌詞がセルビアのターボ・フォークのようだと批判されました。また、聖母マリアが描かれたシャツなど、宗教的な表現をあしらった衣装に対しては、宗教的な要素の乱用であるとの批判も寄せられました。しかし、アルバム自体は大きな人気を博し、セヴェリナはセゼン・アクス作曲の「Tridesete」のミュージックビデオを制作しました。

劇場キャリア：舞台女優としての挑戦

2003年、セヴェリナはリエカのクロアチア国立劇場（HNKリエカ）で舞台デビューを果たし、ロック・オペラ『Karolina Riječka』で主役を演じました。2年後には、ザグレブのメレムプフ劇場でモノドラマ『Čekajući svog čovika』をプロデュース・主演しています。しかし、HNKリエカの演劇『Gospoda Glembajevi』でカステッリ男爵夫人役を演じた際には、演劇経験の浅いセヴェリナが複雑な役柄を演じることの妥当性をめぐり、論争が巻き起こりました。

映画キャリア：映像作品への出演

セヴェリナは、2006年のボスニア映画『Duhovi Sarajeva』で主要な役を演じました。また、2007年にはスロベニア映画『Petelinji zajtrk』にカメオ出演しています。

その他の出来事：スキャンダルと確執

2004年、セヴェリナとボスニア・ヘルツェゴビナの男性との性行為を記録したビデオが流出し、大きなスキャンダルとなりました。この事件は、それまでの彼女のイメージを大きく損なうものでしたが、結果的に国際的な注目を集め、キャリアを拡大するきっかけともなりました。また、同年にはボスニア・ヘルツェゴビナのラッパー、エド・マーイカとの確執も表面化しました。エド・マーイカの楽曲がセヴェリナの性遍歴を揶揄したものであったことが発端となり、セヴェリナは自身の楽曲でエド・マーイカを批判しています。

セヴェリナ・ヴチュコヴィッチは、その才能と美貌、そして数々のスキャンダルによって、常に世間の耳目を集めてきました。彼女の音楽と舞台での活躍、そして波瀾万丈な人生は、これからも多くの人々の関心を集め続けることでしょう。

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