ゼーランディア城包囲戦

ゼーランディア城包囲戦は、1661年 3月30日から1662年 2月1日にかけて、鄭成功がオランダ東インド会社による台湾統治の中心地であったゼーランディア城（現在の台南市安平古堡）を包囲した戦いです。この戦いで鄭成功はゼーランディア城を陥落させ、台湾からオランダ東インド会社を駆逐し、鄭氏王国を樹立しました。

戦前態勢

鄭成功軍

1659年、鄭成功は10万の軍を率いて南京を攻撃しましたが、惨敗を喫し、多くの有能な将軍を失いました。この戦いにより、鄭軍は大きく弱体化しました。鄭成功は、清の支配が徐々に安定してきていると感じており、厦門に閉じ込められた鄭軍は食糧不足に苦しんでいました。この状況を打開するため、鄭成功は新たな根拠地を必要としていました。

1660年、元オランダ通訳の何斌が、数十万の銀を横領した罪で台湾から逃亡し、鄭成功に台湾攻略を主張しました。1661年2月、鄭成功は台湾への攻撃を決定し、将軍たちを集めて協議しました。しかし、台湾は中国から化外の地と見なされていたため、将軍たちはこの計画に同意しませんでした。台湾に駐在した経験のある呉暉は、「風水が悪く、病気が多い」と反対しましたが、鄭成功はこれを退け、出兵を決定しました。

オランダ軍

当時、オランダ東インド会社の台湾総督はフレデリック・コイエットで、ゼーランディア城に駐在していました。1650年頃から中国情勢が不安定化していたため、オランダ東インド会社は鄭成功の台湾侵攻を懸念していました。理事会は台湾の守備隊を増強すべきだと決定しましたが、実行されませんでした。1660年、鄭成功が南京攻撃に失敗した後、台湾侵攻の噂が広まりました。台湾にいた中国商人は財産を故郷に戻し始め、オランダ側は鄭成功軍が3月末に来襲すると結論付けました。

コイエットは警戒を強化し、中国人との協力を防ぐために有力者を軟禁しました。また、田んぼの米を焼き払い、ゼーランディア城の周りに新たな砦を建設しました。バタヴィアに援軍を要請しましたが、援軍の到着は遅れました。さらに、1661年2月、ヴァンダーラーンが台湾から多くの兵を連れてバタヴィアに戻ったため、台湾に残されたオランダ軍はわずか1,500人でした。

戦闘経過

1661年3月、鄭成功は2万5千人の兵を率いて厦門を出港し、台湾へ向かいました。オランダ軍は、鄭成功軍が南海峡から侵攻すると予想していましたが、鄭成功軍は鹿耳門水路から台江内海に侵入しました。この奇襲により、オランダ軍は対応が遅れました。鄭成功は軍を二つに分け、一つはゼーランディア城を封鎖するために北線尾に上陸し、もう一つはプロヴィンティア城を包囲しました。プロヴィンティア城のオランダ守備隊はわずか400人しかおらず、鄭成功軍の圧倒的な兵力に敵いませんでした。

コイエットは援軍を送るも、鄭軍によって阻止され、プロヴィンティア城の守備隊長ヴァレンティンは城を放棄し、ゼーランディア城に撤退しました。鄭成功はプロヴィンティア城を占領し、半月分の食糧を確保しました。その後、鄭成功軍は海と陸からゼーランディア城を攻撃しましたが、オランダ軍の抵抗にあい、包囲戦となりました。

鄭成功は、オランダ軍の意図を読み、和平交渉を拒否し、プロヴィンティア城を包囲しました。包囲されたヴァレンティンは、食糧と水の不足、援軍の望みが絶たれたことから降伏しました。ヴァレンティンは、鄭成功の指示を受け、ゼーランディア城のコイエットに降伏を勧告しましたが、コイエットはこれを拒否しました。鄭成功は包囲を強化し、ゼーランディア城を孤立させました。

5月、鄭軍はゼーランディア城への攻撃をさらに強化しました。バタヴィアからの援軍が到着しましたが、鄭軍の優勢を見て、援軍は上陸を諦めました。オランダ軍は、清と協力して鄭軍を攻撃しようとしましたが、失敗しました。鄭成功は、1662年1月25日にゼーランディア城への総攻撃を開始し、激しい砲撃の後、ユトリヒ要塞を占領しました。ゼーランディア城は陥落寸前となり、コイエットはついに降伏を決め、鄭成功に城を引き渡しました。これにより、オランダ東インド会社の台湾統治は終わりを告げ、鄭成功は台湾に最初の漢人政権を樹立しました。

戦後処理

鄭成功は、降伏合意に従い、オランダ兵の撤退を許しましたが、捕虜については合意には含まれていないと主張し、返還を拒否しました。オランダ人捕虜の中には、宣教師のアントニウス・ハンブルクとその家族もいました。鄭成功はハンブルクをゼーランディア城に送り、降伏を促させようとしましたが、ハンブルクはこれを拒否し、鄭成功に処刑されました。

また、中国人の間で、オランダ人が台湾の原住民に中国人殺害を唆しているという噂が広まったため、鄭成功は報復として約500人のオランダ人男性捕虜を処刑し、女性と子供も処刑しました。生き残ったオランダ人女性と子供は奴隷にされ、女性は鄭成功の指揮官に性的快楽のために利用された後、中国兵の妻となることを強いられました。

この戦いで、鄭成功は台湾を掌握しましたが、オランダ人捕虜に対する残虐な行為は、後の歴史において語り継がれることとなりました。

脚注

[脚注の内容は省略]

参考文献

[参考文献の内容は省略]

ゼーランディア城包囲戦