ソイルマーク

ソイルマークとは

ソイルマーク（Soil Mark）は、地下に埋もれている古代の建物や溝の遺構にたまった土によって、地表面の色や質が変化し、遺構の形状が浮かび上がる現象を指します。この現象は、土壌痕とも呼ばれています。また、埋没した遺構が周囲の草本植物の生育に影響を与える場合、それらの生育度合いの差異からも地表面に遺構の形状が現れることがあり、これをクロップマーク（Crop Mark）と呼びます。

ソイルマークの形成過程

考古学的な遺構、たとえば竪穴建物や古墳、周溝、土坑などは、当時の地表面から掘られた「穴」です。この穴には、時間が経つにつれて土がたまっていき埋没します。この埋まった土は「覆土」と呼ばれ、周囲の自然に堆積した土層と異なる特性を持つことがあります。具体的には、土質や水分保持能力（乾燥具合）に差が生じ、これが現在の地表の色の違いとなって現れ、埋没遺構の形状が模様として浮かび上がるのです。

また、現状が田畑の場合、ソイルマークと共にクロップマークが出現することが多く、平面上での視認は難しいですが、高高度からの航空写真によってこれらの模様が明らかになります。特に、ソイルマークは埋没している遺構の発見やその種類、規模の把握に役立つ重要な手段となっています。

具体的な事例

1. 横瀬古墳

鹿児島県曽於郡大崎町に位置する横瀬古墳は、前方後円墳として国の史跡に指定されています。この古墳は平地の中にあるため、周囲の溝や堤防を地表から認識することはできません。しかし、航空写真を利用すると、墳丘の周囲に2重の黒色帯が確認でき、これは墳丘周囲に埋没した周溝やその間にある堤防がソイルマークおよびクロップマークとして現れていることを示しています。この観察により、古墳の実際の規模や形状についての手がかりが得られるのです。

2. 埼玉稲荷山古墳

埼玉県行田市の埼玉古墳群に所在する埼玉稲荷山古墳も、ソイルマークが確認される事例の一つです。1980年に発表された調査報告書によると、1968年に撮影された航空写真では、墳丘の周囲に長方形の周溝や失われた前方部が映し出されています。これにより、古墳の埋没状況が明らかになり、歴史的な価値を持つ遺構としての重要性が高まります。

3. 井上長者館跡

茨城県行方市にある井上長者館跡では、伝承に「金塚長者の郭」と称されています。1962年に撮影された航空写真からは、田畑の中に一辺100メートルの堀に囲まれた居館が埋没しているのが確認されており、これがクロップマークまたはソイルマークとして認識される例となっています。

まとめ

ソイルマークは古代の遺構を探る重要な手段であり、航空写真によってその存在を視覚的に捉えることができます。これにより、埋没された遺跡の発見や理解が進み、考古学の研究に貢献することが期待されています。

もう一度検索