ソッド・ハウス

ソッドハウス：開拓時代の知恵が凝縮された住まい

アメリカ合衆国とカナダの開拓時代、特にプレーリーと呼ばれる広大な草原地帯では、木材や石材が不足していました。そこで人々は、豊富に生えていた芝生を利用して住居を建設する知恵を生み出しました。それがソッドハウスです。丸太小屋に代わる住まいとして、多くの開拓者たちがソッドハウスで生活を送りました。

ソッドハウスの構造と特徴

ソッドハウスは、厚く頑丈なプレーリーの芝生を、およそ60cm×30cm×15cmほどの長方形に切り出し、それを積み重ねて壁を作りました。屋根には様々な材料が使われ、ドアや窓も設置されました。

比較的安価に建設でき、優れた防音性も備えていた一方、湿気がたまりやすく、雨にも弱いという欠点がありました。そのため、外壁は漆喰や木板で保護し、内壁は帆布や石膏で覆うなど、維持管理には継続的な修繕が必要でした。

世界各地に残るソッドハウス

ソッドハウスは、アメリカやカナダだけでなく、アイスランドなどでも見られます。それぞれの地域で、気候や環境に適応した独自の建築様式が発展しました。

アイスランド

アイスランドでは、スカーガフィヨルズル民族博物館やアゥルバイル野外民族博物館といった施設で、伝統的なソッドハウスを見学することができます。

カナダ

サスカチュワン州にあるアディソン・ソッドハウスは、カナダ国定史跡に指定されています。また、ニューファンドランド島にあるランス・オ・メドーは、10～11世紀のノース人の入植地跡で、復元されたソッドハウスを見ることができます。世界遺産にも登録されています。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、カンザス州、ネブラスカ州、ミネソタ州、アラスカ州など、多くの州でソッドハウスやソッドハウス跡が史跡として残されています。これらは、アメリカ合衆国国家歴史登録財に指定されているものが多く、コットンウッド・ランチ、ドウズ・ソッド・ハウス、ヘマン・ギブズ・ファームステッドなど、数多くの場所が観光地として公開されています。 これらの史跡は、開拓時代の生活を垣間見ることができる貴重な文化財です。

ソッドハウスと開拓の歴史

ソッドハウスは、単なる住居ではなく、開拓者たちの創意工夫と、厳しい自然環境に立ち向かうたくましさを象徴する建造物です。限られた資源の中で、知恵と技術を駆使して生活の場を築き上げた開拓者たちの歴史を、ソッドハウスは今も語り継いでいます。

多くの写真は、ネブラスカ州の開拓時代の写真家、ソロモン・D・ブッチャー（1856-1927）の作品によって残されています。彼の著書『Pioneer History of Custer County』や『Sod Houses, or the Development of the Great American Plains』には、1000枚以上のソッドハウスの写真が収められています。これらの写真資料は、当時の生活や社会を理解する上で貴重な史料となっています。

関連事項

ソッドハウスに関する理解を深める上で、関連事項として、アイスランドのターフハウス、ブルデイ、カナディアンプレーリー、竪穴建物、草屋根、版築なども参考になります。これらの建築様式は、それぞれ異なる地域や文化において、自然環境への適応と持続可能な建築技術を示すものです。

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