版築

版築（はんちく）とは

版築とは、土を建材として突き固め、強固な壁や建築物の基礎を築く древний 工法です。特に、石灰分を多く含む微粒子から成る黄土が堆積した黄河流域で древний から発展しました。版築で作られた構造物自体を指して「版築」と呼ぶこともあります。

本来、版築は土や石、少量の石灰や稲藁などの凝固材で作られますが、現代ではセメントを混ぜてコンクリートに近い強度を持たせることもあります。

版築の概要

版築は非常に頑丈で、城壁や墳墓などの大規模建造物、道路や家屋などに利用されてきました。一方で水に弱いという欠点があり、湿潤な地域では高い構造物を築くのが難しいとされています。

中国では、都城や長城などの大規模工事で древний から многократно 使用されてきました。日本では主に家屋の壁や城郭の土塁などに用いられましたが、現在ではほとんど廃れています。しかし、中国の西域などでは、安価で技術的に容易であること、粒子の細かい黄土が版築に適していることから、現代でも利用されています。また、版築は древний 世界では日干しレンガと同様に распространенный 手法であり、西洋でも民家や教会などで見られ、現代建築でも外壁などに用いられています。

版築の築造方法

1. 枠の設置: 版築を作る場所に、両側を板で囲んで枠を作ります。板の大きさは長さ1.5m程度、高さは10cm程度が目安です。一度に高く積み上げるよりも、薄く重ねる方が強度が増します。枠は、横に支えとなる柱を立てるなどして、頑丈な構造にする必要があります。
2. 土の投入: 板で挟まれた枠の中に土を入れます。強度を高めるために、小石や砂利、藁や粘土などを混ぜることもあります。
3. 突き固め: たたき棒や「たこ」と呼ばれる道具で、土を硬く突き固めます。枠を頑丈な構造にする必要があるのは、この突き固める作業に耐えるためです。
4. 積み重ね: 板の高さまで突き固めたら、板の上に新しい板を継ぎ足すか、今の板を外して次の枠を作ります。この作業を繰り返し、数十段と積み重ねることで高い壁を作ることができます。
5. 完成: 目標の高さに達したら、枠板を外して完成です。日本では、土塁を版築で作る際に、表面を硬く滑らかにするため、枠板を外した後に外側を叩いて硬くすることもありました。また、版築の外側に石を積み重ねて石垣とすることもありました。

各国における版築の利用例

中国

中国では、堤防、城壁、土塁、家屋、寺院、墳墓、道路など、あらゆる構造物に版築が用いられました。秦漢時代に森林資源が枯渇し始め、木材が高価になると、構造物の建材として可能な限り土が用いられ、版築や、土を焼き上げた磚（せん）と呼ばれるレンガが使用されました。

特に、中原や山東地方で древний から版築が用いられてきました。中原では仰韶文化の後期には、環濠と土塁に囲まれた集落が出現したとされています。紀元前2000年から1500年頃に栄えたとされる二里頭遺跡の宮殿跡には、基壇や回廊、城壁とみられる箇所に版築が用いられていました。殷・周の時代になると、巨大な都城建築を始め、さらに広い用途に版築が用いられるようになり、土木・建築に広く活用されるようになりました。秦代の万里の長城や始皇帝陵などの巨大建造物から、農民の家屋や塀に至るまで、版築は幅広く利用されました。現代でも、簡易な建物を建てる際に版築が用いられています。

ただし、江南地域では中原・華北に比べて温暖湿潤な環境が版築に不向きであったため、近代まで木造建築が主流でした。

日本

日本では、家屋の壁に用いることもあったと推定されますが、多くは墳墓や寺院の基礎部分、築地塀などの土塀、土塁、地盤改良に用いられました。中国と異なり、日本では黄土のような粒子の細かい土が少ないため、魚油や石灰、藁などを混ぜて補強としました。

墳墓に版築を用いる例としては、弥生時代の吉野ヶ里遺跡の墳墓群や、古墳時代の纒向型前方後円墳などで確認できます。近年、高松塚古墳においても墳丘における版築の利用が確認されました。古墳での利用は寺院での技術の応用であると考えられています。古代の寺院では、堂宇の基壇の地固めに版築を用いました。基壇の表面は石材で仕上げ、内部は深く掘り下げた後に版築で強固に固めてあります。法隆寺では版築が多用され、多くの建物の下に版築で強化された地盤があります。

土塀の構築には、現代でも版築工法を用いることがあります。平安京などでは貴族の館の塀として、時代が下っても寺院や豪商の屋敷の塀に многократно 用いられました。土塀より大規模な土塁については、戦国時代以降の城郭に版築が многократно 活用されました。土で作る防塁としては最も急峻な角度を形成することができたためです。

版築は地盤改良の手段としても древний などに многократно 用いられました。日本は древний から沼沢地や地盤の柔らかい地域が多く、大規模な建築をする際には地盤改良の必要があり、版築が用いられました。地面を硬い岩盤まで掘り下げ、そこから版築で硬く固めることにより、大規模な建築物に耐えうる地盤を作りました。

近年では、INAXが愛知県に土・どろんこ館を建てました。この建物本体は版築ではありませんが、壁にあたる部分などが版築で作られています。

ブータン

ブータンでは、農家などの家屋に版築が многократно 用いられています。築造方法は比較的粗く、一度に盛る高さも50cm程度の場合があります。家屋の壁は厚く、おおむね50cmから1mという築地塀並みの厚さを持つのが特徴です。建物自体は2階か3階建てで、地階から2階の下層階を版築で作ります。地階は窓がほとんどなく、2階にも少ないのが特徴です。これは版築の持つ調温・調湿機能を活用した倉庫や食料庫などにあてているためです。この構造の上に上部階を木造で建て、居住空間にあてます。一部は版築であることもありますが、版築は重いため、積み重ねるだけ下の階の壁が上を支えるために厚くなるので、上部では多用されません。その外観は、土塁の上に平屋建てが載っているように見えます。

著名な版築の例

法隆寺の築地塀 - 版築で作られ、表面には水平方向に線が走っています。これは版築を作る際についた枠板の跡です。
武蔵国分尼寺金堂基壇 - 国の史跡武蔵国分寺跡の国分尼寺金堂基壇の版築は、地面を掘り下げてあり一部をガラス越しに観察することができます。
* 万里の長城 - 万里の長城のうち、嘉峪関あたりは版築で作られた簡略なものです。近年、付近の住民が家屋の材料にするために持ち去ったり、私道を作るために破壊するなど、破損が激しいです。

日本における版築の再評価

日本では最近、ほとんど化学製品を使わない自然由来の方法である点や、版築の材料である土が持つ適度な調湿・調温機能から、その有効性が見直され研究が行われています。

もう一度検索