ソト族

ソト族：歴史、文化、そして現代社会

ソト族は、5世紀頃からアフリカ南部に居住するバントゥー系民族です。彼らの歴史は、部族社会から統一国家の形成、そして現代社会における挑戦まで、複雑で興味深いものです。

19世紀までの歴史

およそ200年から500年頃、バントゥー語を話す遊牧民が南アフリカに定住を始めました。西・中央アフリカ周辺を起源とする人々は、鉄器時代とともに南アフリカ全土に広がり、先住の狩猟採集民と徐々に融合していきました。19世紀までには、安定した定住生活が確立されました。東部沿岸部では、ングニ語を話すズールー族やコサ族が勢力を伸ばす一方、ソト族は高原南部（現在の自由州とハウテン州の一部）に多くの王国を築きました。ソト族社会は、首長が統治するクラールや拡大氏族を基盤とした分散型の社会構造を持っていました。これらの首長国は、緩やかな連合を形成していました。

ズールー族の拡張とヨーロッパ人入植

19世紀に入ると、ソト族の歴史に大きな転換期が訪れます。東部ではシャカ王がズールー王国を統一し、常備軍を擁する強力な王国を築き上げました。ズールー族の拡大（ディファカネ）により、多くのソト族が東部から逃れることになりました。1823年には、マコロロ族と呼ばれるソト族の一団が北へ移動し、オカバンゴ・デルタやザンベジ川を越えてバロツェランド（現在のザンビア）へと至りました。

一方、1652年にケープタウンに入植したオランダ人の子孫（ボーア人）も、ソト族の領域に到達し始めました。ナポレオン戦争後、南アフリカ南西沿岸部がイギリスに割譲されると、ボーア人はイギリス支配からの独立を目指し、内陸部へと移動していきました。

モショエショエ1世とレソト王国の建国

この混乱期において、モショエショエ1世は、ハイヴェルド南部のソト諸王国を統一し、強力な指導者となりました。彼は優れた外交手腕と戦略によって、ズールー族からの避難民を統合し、新たな国家を築きました。彼の統治下で、レソト王国は、ズールー族の脅威やボーア人の進出、そしてイギリスの影響力拡大といった困難を乗り越え、生き延びました。1822年には、ブータ・ブーテを首都に定め、後にサバ・ボシウへと遷都しました。ボーア人の侵略に対抗するため、彼はフランスの宣教師を受け入れ、外交や近代兵器の購入などの面で支援を受けました。宣教師たちは、ソト語の正書法の制定や教材の印刷にも貢献し、1878年には最初のソト語聖書が出版されました。

イギリス保護領時代と独立

1868年の自由州・ソト戦争でボーア人に西部低地を奪われた後、モショエショエ1世は、レソト（バソトゥランド）をイギリスの保護領とすることで、国家の存続を図りました。イギリスは外交と防衛を担当し、国内問題は地域の首長が管理する形となりました。1966年、バソトゥランドはイギリスから独立し、レソト王国となりました。

今日のソト語

ソト語（セソト語）は、レソトの人口の85％（約150万人）の第一言語であり、レソトと南アフリカの公用語となっています。南アフリカでは、約400万人がソト語を第一言語として話しており、自由州では特に多く話されています。ソト語は、教育やメディアなどを通して広く使用されており、アパルトヘイト後の時代には、ラジオやテレビ放送、新聞、雑誌などを通して、その発信力はさらに強まりました。文学作品も数多く発表されており、トーマス・モフォロの叙事詩「チャカ」は有名です。

今日のソト族

ソト族の中心地は、南アフリカの自由州とレソトです。両地域では、貧困や開発の遅れといった課題を抱えています。多くの人が経済的な困難に直面しており、土地所有者も小規模な商業農業に従事するなど、生活水準の向上が課題となっています。また、人口移動によって、ソト語はアフリカ南部に広く普及しています。男性は鉱山労働に出稼ぎに出るケースが多く、都市部への人口流入が社会問題となっています。アパルトヘイト政策はソト族社会に大きな影響を与えましたが、アパルトヘイト後も、教育や医療、法律など専門的な分野で働く人々と、そうでない人々との間には格差が存在しています。宗教的には、キリスト教が広く普及しており、伝統的な信仰と混ざり合った形で信仰されています。

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