ソドミー法

ソドミー法：歴史と世界各国の現状

ソドミー法は、特定の性行為を犯罪とする法律です。この法律で対象となる性行為は法文では曖昧なままですが、一般的には口内性交や肛門性交、獣姦などが含まれ、「自然に反する性行為」と表現されることが多くあります。

歴史的背景

ソドミー法の起源は古く、宗教的な規範と深く関わっています。紀元前1075年の中アッシリアの法典には、軍隊における男性間の性交渉を禁じる記述があり、これが現存する最古の記録の一つです。古代ローマの『Lex Scantinia』も同性間の性行為を規制する内容を含んでいましたが、完全な禁止ではありませんでした。

キリスト教が世界観を支配するようになると、西洋社会におけるソドミー法の規制は強まりました。新約聖書にはソドミーを批判する記述があり、その影響は大きく、イングランドではヘンリー8世が1533年に「Buggery Act」を制定し、肛門性交や獣姦を犯罪としました。死刑が規定されていましたが、実際に執行されたのは1861年までではありませんでした。

1957年の「ウォルフェンデン委員会のレポート」は、成人同士の合意による同性間性行為を犯罪から除外すべきと提言し、多くの西側諸国で同性愛行為を禁じる法律の撤廃が始まりました。2003年のアメリカ合衆国最高裁判所のローレンス対テキサス州裁判の判決は、成人間の合意による私的な性行為を州法が犯罪とすることは違憲であるとしました。

世界各国の現状

現在、ヨーロッパ、北米、中南米の多くの国ではソドミー法が撤廃されていますが、ベリーズ、ギアナ、一部のカリブ諸国では依然として存在します。アジアでは、欧米を起源とするソドミー法は中国、台湾、北朝鮮、韓国、ベトナムでは施行されたことがなく、日本、カザフスタン、フィリピン、タイ、インドなどでも撤廃されています。イスラム教国ではイスラム法に基づくソドミー罪があり、死刑を科す国もあります。

オーストラリア

オーストラリアは植民地時代からイギリスのソドミー法を踏襲していましたが、1970年代からのキャンペーンなどを経て、1975年から1997年にかけて段階的に撤廃されました。現在も性的同意年齢に州ごとの差異が見られます。

ブラジル

ブラジルは成人間の合意による性交渉に制限を設けていませんが、強姦や児童ポルノ関連法、軍刑法においては規制があります。

カナダ

カナダは1859年にソドミー法を強化し、死刑を規定していましたが、1969年に撤廃されました。現在、18歳以上の合意に基づく肛門性交を認めていますが、第三者の不在を条件としています。

中華人民共和国

中国では清朝時代に「鶏姦罪条」がありましたが、1997年の刑法改正で同性愛行為は非犯罪化されました。

香港

香港では、同性間の肛門性交を規制する法律がありますが、司法審査を経て、性的同意年齢が21歳から16歳に引き下げられるなど、法改正の動きがあります。

マカオ

マカオは17歳以下の肛門性交を禁じています。

台湾

台湾では、性的同意年齢は18歳で、性的指向による区別はありません。

デンマーク

デンマークは1933年に同性愛を完全に合法化しました。

フランス

フランス革命後、同性愛を罰する法律はなくなりましたが、19世紀まで他の法律による制限がありました。1982年に性的同意年齢の格差が解消されました。

ドイツ

ドイツでは「男性間の姦淫」を禁じる刑法175条が1871年から1994年まで存在していました。現在、同性愛は合法です。

ジブラルタル

ジブラルタルは男性間の肛門性交を規制していますが、性的同意年齢に異性間と男性同性間で差があります。

ハンガリー

ハンガリーは1962年に同性愛を非犯罪化し、2009年には同性カップルにパートナーシップ登録を認めています。

アイスランド

アイスランドは1940年から同性愛を合法化し、2010年から同性結婚を認めています。

インド

インドはイギリス領インド帝国時代からのソドミー法を引き継いでいましたが、2009年の判決で成人間の合意に基づく私的な性行為への適用が制限されました。

イスラエル

イスラエルはソドミー法を引き継いでいましたが、1988年に廃止されました。

イタリア

イタリアでは、性的同意年齢以上であれば同性間の性行為は犯罪とされていません。

日本

日本は明治時代に一時的に男性同士の肛門性交を違法としていましたが、その後同性愛を犯罪とする法律は制定されていません。

韓国

韓国では軍刑法において同性間の性的接触が規制されています。

マレーシア

マレーシアは肛門性交を禁じており、重い刑罰が科されます。

ニュージーランド

ニュージーランドは1986年に同性間の性行為を非犯罪化しました。

ポーランド

ポーランドは同性愛を違法としたことがない国の一つです。

ロシア

ロシアは1934年に男性間の性行為を違法としましたが、1993年に非犯罪化されました。

シンガポール

シンガポールは男性間の性行為を規制しています。

スウェーデン

スウェーデンは1944年に同性愛を合法化しました。

タイ

タイは1956年に同性愛を非犯罪化しました。

イギリス

イギリスでは、歴史的に「buggery」として知られていましたが、1967年以降、成人男性間の合意に基づく私的な性行為は合法化されました。その後性的同意年齢の統一などが行われ、現在では16歳に統一されています。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、2003年のローレンス対テキサス州裁判の判決により、州レベルでのソドミー法は全て無効となりました。しかし、軍では依然として規制があります。

ジンバブエ

ジンバブエは1995年に同性愛行為を取り締まる法律を制定しました。

イラン

イランでは、同性愛に死刑が科される場合があります。

サウジアラビア

サウジアラビアではイスラム法に基づき同性愛を違法としていますが、刑罰は一律ではありません。

まとめ

ソドミー法は歴史的に宗教や道徳観念と深く結びついていますが、近年は人権意識の高まりと共に、多くの国で撤廃または緩和されています。しかし、世界には依然として同性愛行為を犯罪とする国や地域が存在し、LGBTの人々の権利問題が依然として重要な課題となっています。各国の法制度や社会情勢を理解することで、より多様な社会を実現するための議論を進めることが重要です。

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