ソフィテル東京

ソフィテル東京：幻の超高層ホテル

ソフィテル東京は、かつて東京都台東区、上野の不忍池畔に存在したホテルです。元々は「ホテルCOSIMA」として1994年に開業しましたが、その短い歴史の中で、所有者の変更、ブランドの転換、そして閉業と解体という劇的な変遷を遂げました。

ホテルCOSIMAとしての誕生

ホテルCOSIMAは、法華クラブによって建設されました。ホテル名は創業家である小島家にちなんでいます。当時としては珍しく、イギリスのホスピタリティ企業と提携し、バトラーサービスを導入するなど、従来のビジネスホテルとは一線を画す高級ホテルとしてスタートしました。

独創的な建築デザイン

地上26階建て、客室数わずか71室という細身の建物は、建築家・菊竹清訓氏によって設計されました。上野恩賜公園と東京大学に面した特徴的な外観は、樹木をイメージしたと言われています。4層ごとに張り出したサービスユニットが、独特のシルエットを生み出していました。また、総合設計制度を活用することで、容積率の緩和を受け、高さを確保していました。その形状から、近隣の寛永寺五重塔と並び、「五重塔ビル」とも呼ばれました。

最上部には、40トンの水が入る大型水槽が設置されており、これは風圧に対する制震装置として機能するとともに、消火用水としても利用される仕組みでした。地下の宴会場は、ロビーと一体化して利用できるなど、空間の多目的利用が考慮された設計となっていました。

バブル崩壊とアコーホテルズによる買収

ホテルCOSIMAは、開業当時、法華クラブの経営状況は良好でしたが、バブル崩壊後の投資負担が重くのしかかり、1997年に会社更生法の適用を申請する事態となります。その後、フランスのアコーホテルズが土地ごと買収し、フランス人デザイナーによる全面改装を経て、2000年に「ソフィテル東京」として再開業しました。

短命に終わったソフィテル東京

ソフィテル東京へのリブランド後は、上野の美術館を訪れる外国人観光客の長期滞在が増加し、国際色豊かなホテルとしての一面を見せました。しかし、わずか4年後の2004年には営業を終了。2007年には建物が解体されました。これは、高さ100mを超える超高層ビルとしては、国内初の解体事例として知られています。

現在

ソフィテル東京の跡地には、現在「パークタワー上野池之端」が建設されています。かつて存在した独創的なホテルは、今やその姿を留めていません。

ソフィテル東京は、短い期間ながらも、そのユニークな建築デザインと、高級ホテルとしての挑戦で、人々の記憶に残る存在でした。


参考文献
新建築社「作品 ホテルCOSIMA 菊竹清訓建築設計事務所」『新建築』1994年8月
建築思潮研究所「実作資料編・Hotel Sofitel TOKYO(HOTEL COSIMA)」『建築設計資料59 シティホテル2 アーバンリゾート＆ビジネスユース』建築資料研究社、1996年12月
* 富田昭次「第16話 独創的なホテルの悲しい末路」『ホテル百物語』青弓社、2013年8月14日

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