ソムサック・シンチャチャワン

ソムサック・シンチャチャワン

タイ出身の元プロボクサー、ソムサック・シンチャチャワン（本名同、1977年7月17日生）。彼はそのキャリアを通じて、世界主要団体であるWBAのベルトを含む複数の王座を獲得し、特に地元タイ国内での圧倒的な強さで知られたハードパンチャーである。

キャリア初期から台頭へ

1995年12月8日にプロボクシングの世界に足を踏み入れたソムサックは、順調にキャリアを重ねる。プロ8戦目となる1996年12月7日には、早くもIBFインターコンチネンタルスーパーフライ級王座を獲得し、その才能の片鱗を見せた。しかし、キャリアは常に順風満帆というわけではなかった。1998年2月18日、同郷のラタナチャイ・ソーウォラピンとの対戦で、キャリア初の黒星（判定負け）を喫し、プロの厳しさを経験する。

この敗北を乗り越え、階級を上げたソムサックは、1998年12月27日にWBF世界スーパーバンタム級王座を獲得。このベルトを5度にわたり防衛し、スーパーバンタム級での地位を確立していった。

PABA王座の長期政権

2001年6月9日、ソムサックはPABAスーパーバンタム級暫定王座決定戦に挑み、日本の池田タカオを7回TKOで下して暫定王座を獲得。この暫定王座を3度防衛した後、2002年3月8日には正規王座に認定された。PABAスーパーバンタム級王者としてのソムサックは圧倒的な強さを誇り、最終的には暫定期間を含め通算21度もの防衛に成功。これは特筆すべき長期政権であり、彼がこの階級でいかに安定した実力を持っていたかを示している。

WBA世界王座獲得と激闘

PABA王座での実績を背景に、ソムサックはついに世界最高峰の舞台へ挑む機会を得る。2006年3月18日、フランス・ルヴァロワ＝ペレにて、WBA世界スーパーバンタム級王者マヤル・モンシプールに挑戦した。モンシプールは強敵として知られていたが、ソムサックは終始粘り強く攻め続け、10回2分47秒、モンシプールをTKOで破り、悲願の世界王座を獲得した。

この試合は両者一歩も引かない壮絶な打ち合いとなり、その激しさから権威あるリングマガジン誌によって同年の「ファイト・オブ・ザ・イヤー」に選出された。この一戦はソムサックのキャリアの頂点と言えるだろう。

世界王座陥落とその後の戦い

しかし、世界王座の保持は長くは続かなかった。王座獲得からわずか半年後の2006年10月4日、母国タイで行われた団体内王座統一戦で、暫定王者のセレスティーノ・カバジェロ（パナマ）と対戦。この試合はソムサックにとって厳しいものとなり、3回1分48秒TKO負けを喫し、王座をカバジェロに明け渡す結果となった。

世界王座を失った後も、ソムサックはリングに上がり続けた。2007年5月11日には日本の村井勇希と対戦し、判定で勝利を収めている。2008年3月31日には再び世界挑戦への足がかりを掴むべく、WBA世界スーパーバンタム級挑戦者決定戦でプーンサワット・クラティンデーンジムと対戦したが、11回TKO負けを喫し、挑戦権獲得はならなかった。

その後、階級をスーパーフェザー級に上げ、2009年6月19日にはPABAスーパーフェザー級暫定王座を獲得。この王座を2度防衛し、複数階級でのPABA王座獲得という実績を残した。

ソムサック・シンチャチャワンのキャリアは、PABA王座での圧倒的な長期政権と、マヤル・モンシプールとの壮絶な世界戦、そしてカバジェロへの敗北という浮沈が特徴的である。彼は一発の強打とタフネスを武器に、長きにわたりタイボクシング界を牽引した選手の一人であった。

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