ソユーズ35号
ソユーズ35号は1980年4月9日にソビエト連邦によって打ち上げられた有人宇宙飛行ミッションです。レオニード・ポポフ船長とワレリー・リューミン操縦士を乗せ、地球軌道上のサリュート6号宇宙ステーションを目指しました。これは同ステーションへの10度目の訪問ミッションであり、そのうち8回がドッキングに成功しています。ソユーズ35号のクルーは、宇宙ステーションに185日間滞在し、当時の人類の宇宙滞在記録を塗り替えました。リューミンにとってはこのミッションは3度目の宇宙飛行であり、前回のミッションからわずか8ヶ月後に再び宇宙へ旅立つことになりました。
ソユーズ35号は、事前に無人試験機ソユーズT-1や無人補給船プログレス8号による活動が行われた後の打上げでした。プログレス8号はステーションの後方ポートにドッキングし、軌道修正作業などを実施していました。当初、リューミンの搭乗は予定されていませんでしたが、フライトエンジニア候補だったワレンティン・レベデフが事故で負傷したため、急遽バックアップクルーから選ばれました。当時、十分な飛行経験を持つバックアップ要員が限られていたこともあり、リューミンが短期間での再搭乗を受け入れるか、ミッションを延期するかの厳しい選択が迫られました。1980年4月10日、ソユーズ35号はサリュート6号の前方ポートにドッキングし、ポポフとリューミンはステーションへ入室しました。リューミンは、以前彼自身が前のミッションクルーとしてサリュート6号滞在中に残したノートを目にし、複雑な感情を抱いたと伝えられています。
サリュート6号は打上げから4年が経過しており、経年劣化の兆候が見られ始めていました。移動区画の二つの窓の透明度が失われたり、流星塵やデブリによる窓のひび割れが多数確認されたりしました。乗組員は、老朽化への対応として、姿勢制御装置や生命維持システムの部品交換、新しい警報システムの設置といった重要な修理作業を行いました。また、地上管制センターの時計とステーションの時刻を同期させ、80kgの追加バッテリーを設置しました。プログレス8号からは生命維持システムのタンクに酸素と窒素が補給されました。プログレス8号は役目を終え、4月18日にゴミを搭載して軌道離脱しました。続いて4月29日にはプログレス9号がドッキングし、水や貨物、燃料を補給しました。この補給活動は5月12日に完了し、長期滞在クルーにとって必要な物資の供給が確保されました。これらの定期的な補給は、長期ミッションを支える上で不可欠でした。
ソユーズ35号のミッション期間中、サリュート6号には複数の宇宙船が訪れました。5月20日にプログレス9号がドッキング解除し後方ポートを空けた後、5月26日にはソユーズ36号が打ち上げられました。この船には、ワレリー・クバソフとハンガリー初の宇宙飛行士ファルカシュ・ベルタランが搭乗していました。これは友好国の宇宙飛行士を宇宙へ送るインターコスモスプログラムの一環で、当初は前年に計画されていましたが、ソユーズ33号の失敗により延期されていました。ファルカシュはステーションで放射線量測定や無重力環境下での細胞実験などを行いました。ミッション終了後、クバソフとファルカシュは、長期滞在クルーのために新しいソユーズ36号を残し、ソユーズ35号で地球に帰還しました。これにより、機体交換が行われたことになります。ソユーズ36号はその後、ステーションの前方ポートに移動されました。また、6月5日にはソユーズT-2が打ち上げられ、ユーリイ・マリシェフとウラジーミル・アクショーノフが搭乗し、ソユーズT型宇宙船の初の有人試験飛行としてサリュート6号を訪れました。このミッションは技術試験が主目的であったため、短期間で終了しました。
訪問者たちの滞在と帰還の間には、クルーによるステーションの維持・修理作業が続けられました。Kaskad姿勢制御装置の修理や、様々な材料処理実験などが実施されました。7月1日にはプログレス10号が到着し、通常の補給品に加え、交換用の機材、さらにはポラロイドカメラ、カラーテレビモニター、ソビエト連邦のポップ音楽テープといった個人的な慰安物品も届けられました。プログレス10号は燃料移送後、7月17日にドッキング解除し、7月19日に軌道離脱しました。この7月19日には、ポポフとリューミンは軌道上からモスクワで開催されていたオリンピック開会式会場へ生中継でメッセージを送りました。
続く打上げ窓では、ベトナム初の宇宙飛行士となるファム・トゥアンとヴィクトル・ゴルバトコがソユーズ37号で7月23日にサリュート6号を訪れました。これはアジア初の宇宙飛行士による宇宙飛行であり、モスクワオリンピックの最中に行われ、世界の注目を集めました。ソビエト連邦のメディアは、ファム・トゥアンがベトナム戦争でのエースパイロットであった経歴に触れ、オリンピックをボイコットしたアメリカに対する政治的なメッセージを含んでいると解釈しました。ファム・トゥアンとゴルバトコは、ソユーズ36号に乗り換えて7月31日に地球へ帰還しました。その翌日、ポポフとリューミンはソユーズ37号を前方ポートへ移動させました。また、クルーは地上研究者と連携し、エレーナFガンマ線望遠鏡を使った天体観測実験を試みましたが、地上側の連携に問題が発生しました。次の訪問者として、キューバ初の宇宙飛行士であるアルナルド・タマヨ・メンデス（アフリカ系初の宇宙飛行士でもあります）とユーリ・ロマネンコがソユーズ38号で9月18日にサリュート6号を訪れました。この打上げは、キューバ国民が自国の宇宙飛行士を軌道上に観測できるよう、比較的早い日程で行われました。タマヨ・メンデスらは27種類の材料処理実験や医学実験を行いましたが、長期滞在クルーの帰還が迫っていたため、機体交換は行われませんでした。
長期滞在クルーの帰還が近づいた9月28日にプログレス11号が打ち上げられたことは予想外でしたが、これは主に老朽化したサリュート6号の推進システムに代わって軌道を維持・上昇させるための目的でした。そして、1980年10月11日、レオニード・ポポフとワレリー・リューミンはソユーズ37号に搭乗し、地球への帰還を果たしました。彼らの宇宙滞在期間は185日間となり、当時の宇宙滞在最長記録を更新しましたが、国際宇宙航行連盟が定める記録認定基準（前記録から10%以上の更新）にはわずかに届かず、公式な認定はされませんでした。しかし、リューミンにとっては3度の宇宙飛行で合計352日間を宇宙で過ごし、個人としての通算滞在記録を大幅に更新する偉業となりました。興味深いことに、彼らは厳しい運動や食事療法を遵守した結果、平均して2kg体重が増加したと報告されています。帰還後の健康状態も良好で、着陸の翌日には30分の散歩ができ、数日後にはテニスを楽しめるまで回復したとのことです。この長期ミッションを通じて、数千枚の地球資源に関する写真や、4万枚以上のスペクトログラムが撮影されるなど、科学的にも多くの成果が得られました。ソユーズ35号によるサリュート6号での4度目の長期滞在ミッションは、過去の技術的問題を乗り越え、総合的に見て大きな成功を収めたと言えるでしょう。
ソユーズ35号は、事前に無人試験機ソユーズT-1や無人補給船プログレス8号による活動が行われた後の打上げでした。プログレス8号はステーションの後方ポートにドッキングし、軌道修正作業などを実施していました。当初、リューミンの搭乗は予定されていませんでしたが、フライトエンジニア候補だったワレンティン・レベデフが事故で負傷したため、急遽バックアップクルーから選ばれました。当時、十分な飛行経験を持つバックアップ要員が限られていたこともあり、リューミンが短期間での再搭乗を受け入れるか、ミッションを延期するかの厳しい選択が迫られました。1980年4月10日、ソユーズ35号はサリュート6号の前方ポートにドッキングし、ポポフとリューミンはステーションへ入室しました。リューミンは、以前彼自身が前のミッションクルーとしてサリュート6号滞在中に残したノートを目にし、複雑な感情を抱いたと伝えられています。
サリュート6号は打上げから4年が経過しており、経年劣化の兆候が見られ始めていました。移動区画の二つの窓の透明度が失われたり、流星塵やデブリによる窓のひび割れが多数確認されたりしました。乗組員は、老朽化への対応として、姿勢制御装置や生命維持システムの部品交換、新しい警報システムの設置といった重要な修理作業を行いました。また、地上管制センターの時計とステーションの時刻を同期させ、80kgの追加バッテリーを設置しました。プログレス8号からは生命維持システムのタンクに酸素と窒素が補給されました。プログレス8号は役目を終え、4月18日にゴミを搭載して軌道離脱しました。続いて4月29日にはプログレス9号がドッキングし、水や貨物、燃料を補給しました。この補給活動は5月12日に完了し、長期滞在クルーにとって必要な物資の供給が確保されました。これらの定期的な補給は、長期ミッションを支える上で不可欠でした。
ソユーズ35号のミッション期間中、サリュート6号には複数の宇宙船が訪れました。5月20日にプログレス9号がドッキング解除し後方ポートを空けた後、5月26日にはソユーズ36号が打ち上げられました。この船には、ワレリー・クバソフとハンガリー初の宇宙飛行士ファルカシュ・ベルタランが搭乗していました。これは友好国の宇宙飛行士を宇宙へ送るインターコスモスプログラムの一環で、当初は前年に計画されていましたが、ソユーズ33号の失敗により延期されていました。ファルカシュはステーションで放射線量測定や無重力環境下での細胞実験などを行いました。ミッション終了後、クバソフとファルカシュは、長期滞在クルーのために新しいソユーズ36号を残し、ソユーズ35号で地球に帰還しました。これにより、機体交換が行われたことになります。ソユーズ36号はその後、ステーションの前方ポートに移動されました。また、6月5日にはソユーズT-2が打ち上げられ、ユーリイ・マリシェフとウラジーミル・アクショーノフが搭乗し、ソユーズT型宇宙船の初の有人試験飛行としてサリュート6号を訪れました。このミッションは技術試験が主目的であったため、短期間で終了しました。
訪問者たちの滞在と帰還の間には、クルーによるステーションの維持・修理作業が続けられました。Kaskad姿勢制御装置の修理や、様々な材料処理実験などが実施されました。7月1日にはプログレス10号が到着し、通常の補給品に加え、交換用の機材、さらにはポラロイドカメラ、カラーテレビモニター、ソビエト連邦のポップ音楽テープといった個人的な慰安物品も届けられました。プログレス10号は燃料移送後、7月17日にドッキング解除し、7月19日に軌道離脱しました。この7月19日には、ポポフとリューミンは軌道上からモスクワで開催されていたオリンピック開会式会場へ生中継でメッセージを送りました。
続く打上げ窓では、ベトナム初の宇宙飛行士となるファム・トゥアンとヴィクトル・ゴルバトコがソユーズ37号で7月23日にサリュート6号を訪れました。これはアジア初の宇宙飛行士による宇宙飛行であり、モスクワオリンピックの最中に行われ、世界の注目を集めました。ソビエト連邦のメディアは、ファム・トゥアンがベトナム戦争でのエースパイロットであった経歴に触れ、オリンピックをボイコットしたアメリカに対する政治的なメッセージを含んでいると解釈しました。ファム・トゥアンとゴルバトコは、ソユーズ36号に乗り換えて7月31日に地球へ帰還しました。その翌日、ポポフとリューミンはソユーズ37号を前方ポートへ移動させました。また、クルーは地上研究者と連携し、エレーナFガンマ線望遠鏡を使った天体観測実験を試みましたが、地上側の連携に問題が発生しました。次の訪問者として、キューバ初の宇宙飛行士であるアルナルド・タマヨ・メンデス（アフリカ系初の宇宙飛行士でもあります）とユーリ・ロマネンコがソユーズ38号で9月18日にサリュート6号を訪れました。この打上げは、キューバ国民が自国の宇宙飛行士を軌道上に観測できるよう、比較的早い日程で行われました。タマヨ・メンデスらは27種類の材料処理実験や医学実験を行いましたが、長期滞在クルーの帰還が迫っていたため、機体交換は行われませんでした。
長期滞在クルーの帰還が近づいた9月28日にプログレス11号が打ち上げられたことは予想外でしたが、これは主に老朽化したサリュート6号の推進システムに代わって軌道を維持・上昇させるための目的でした。そして、1980年10月11日、レオニード・ポポフとワレリー・リューミンはソユーズ37号に搭乗し、地球への帰還を果たしました。彼らの宇宙滞在期間は185日間となり、当時の宇宙滞在最長記録を更新しましたが、国際宇宙航行連盟が定める記録認定基準（前記録から10%以上の更新）にはわずかに届かず、公式な認定はされませんでした。しかし、リューミンにとっては3度の宇宙飛行で合計352日間を宇宙で過ごし、個人としての通算滞在記録を大幅に更新する偉業となりました。興味深いことに、彼らは厳しい運動や食事療法を遵守した結果、平均して2kg体重が増加したと報告されています。帰還後の健康状態も良好で、着陸の翌日には30分の散歩ができ、数日後にはテニスを楽しめるまで回復したとのことです。この長期ミッションを通じて、数千枚の地球資源に関する写真や、4万枚以上のスペクトログラムが撮影されるなど、科学的にも多くの成果が得られました。ソユーズ35号によるサリュート6号での4度目の長期滞在ミッションは、過去の技術的問題を乗り越え、総合的に見て大きな成功を収めたと言えるでしょう。
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