ソユーズ36号

ソユーズ36号ミッション

1980年、ソビエト連邦は有人宇宙船ソユーズ36号（Soyuz 36）を打ち上げ、軌道上の宇宙ステーション、サリュート6号への飛行ミッションを実施しました。これはソビエト連邦にとって、軌道上の施設とのドッキングを試みた11回目のミッションにあたり、そのうち成功裏に完遂したのは9回目でした。特にソユーズ36号は、先にサリュート6号に滞在していたソユーズ35号の長期ミッションクルーを訪れる、最初のミッションという側面を持っていました。

この飛行には、ワレリー・クバソフ飛行士が船長として搭乗しました。クバソフ船長にとって3回目の宇宙飛行でしたが、ソビエトの宇宙ミッションにおいて文民が船長を務めたのは、これが2度目の事例となりました。そして、特筆すべきはハンガリー人民共和国から参加したファルカシュ・ベルタラン飛行士です。彼はハンガリー人として初めて宇宙空間を訪れた人物となりました。このミッションは、東側諸国の宇宙飛行士を国際的な宇宙飛行に招くソビエト連邦のプログラム、「インターコスモス計画」の5番目のフライトとして位置づけられています。

ソユーズ36号の打上げは、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から1980年5月26日に行われました。当初、このミッションは1979年6月5日に予定されていましたが、ソユーズ33号で発生したエンジントラブルによる失敗を受けて延期されていました。打上げの翌日、ソユーズ36号は無事サリュート6号宇宙ステーションのポートにドッキングすることに成功しました。ステーション内では、ソユーズ35号で長期滞在を行っていたレオニード・ポポフ飛行士とワレリー・リューミン飛行士がソユーズ36号の到着を待っていました。

サリュート6号での滞在中、ファルカシュ・ベルタラン飛行士は母国ハンガリーのために様々な科学実験に取り組みました。実験内容が非常に多岐にわたり量も多かったため、時には睡眠時間が3時間程度になってしまうこともあったと伝えられています。具体的な実験としては、搭乗した宇宙飛行士や宇宙ステーション内の環境がどれだけ放射線にさらされているかを評価するため、衣服やステーションの壁に小型の熱ルミネッセンス線量計（熱発光計）を取り付け、その蓄積量を測定する実験が行われました。また、微小重力環境がヒト細胞の機能に及ぼす影響を調べる目的で、体内の免疫応答に関わる重要な物質であるインターフェロンが、無重力状態でどのように生成されるかを検証する実験も実施されました。さらに、地球の天然資源や環境を調査するため、宇宙船に搭載されたカメラを使用し、地上の観測隊や航空機、ヘリコプターと連携しながら、地球表面の撮影および観測ミッションも行われました。

ハンガリーの報道機関は、ファルカシュ飛行士が無重力環境への適応において、クバソフ船長よりも早期に順応したと報じています。

このミッションの重要な目的の一つは、サリュート6号にドッキングしているソユーズ宇宙船を新しい機体と交換することでした。これは、ステーションに長期滞在するクルーが、新しいソユーズ宇宙船で地球に帰還できるようにするためです。1980年5月29日には、ドッキング中のソユーズ宇宙船の推進システムが再起動されました。クバソフ船長とファルカシュ飛行士は、ステーションを離れる前に、長期滞在中のポポフ飛行士とリューミン飛行士との間で、宇宙船のシートの裏地や与圧服、個人的な持ち物などを交換しました。そして、ソユーズ36号は1980年6月3日にサリュート6号を離脱し、地球への帰還を開始しました。彼らを乗せたカプセルは、カザフスタンの都市ジェズカズガンの南東およそ140kmの地点に無事着陸しました。

興味深いことに、ソユーズ36号として宇宙へ飛び立った宇宙船本体は、その後も再利用されました。この機体は、次にサリュート6号を訪れたソユーズ37号の乗組員が地球に帰還する際に使用されたのです。

ソユーズ36号ミッションパラメータ

質量: 6,800 kg
近点高度: 197.5 km
遠点高度: 281.9 km
軌道傾斜角: 51.62°
軌道周期: 89.0 分

乗組員

出発時:
船長：ワレリー・クバソフ (3回目の飛行)
研究飛行士：ファルカシュ・ベルタラン (1回目の飛行、ハンガリー)
帰還時:
船長：ヴィクトル・ゴルバトコ (3回目の飛行)
研究飛行士：ファム・トゥアン (1回目の飛行)
バックアップクルー:
船長：ウラジーミル・ジャニベコフ
研究飛行士：ベーラ・マジャーリ (ハンガリー)

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