ソユーズ38号

ソユーズ38号：キューバ初の宇宙飛行士を乗せた軌道ミッション

1980年に旧ソビエト連邦によって実施されたソユーズ38号は、地球周回軌道上にあったソ連の宇宙ステーション「サリュート6号」への有人宇宙飛行です。このミッションは、ソビエト連邦が進めていた国際宇宙協力プログラム、「インターコスモス計画」の一環として重要な位置を占めていました。特に、インターコスモス計画における有人飛行としては7回目に数えられ、そして何よりも、キューバ共和国から初めて宇宙へ旅立った宇宙飛行士が搭乗した飛行として、歴史にその名を刻んでいます。また、ソユーズ宇宙船がサリュート6号を訪れるのは、このミッションで12回目となりました。

搭乗クルーとその役割

ソユーズ38号の飛行を担ったのは、経験豊富なソビエト連邦の宇宙飛行士と、初の宇宙飛行に挑むキューバの宇宙飛行士の2名です。

船長: ユーリ・ロマネンコ氏（ソビエト連邦）。彼はこのミッションで2度目の宇宙飛行を経験しました。
リサーチ宇宙飛行士: アルナルド・タマヨ・メンデス氏（キューバ）。彼はキューバ共和国初の宇宙飛行士として、この歴史的な飛行に参加しました。彼にとってこれが初めての宇宙飛行でした。

このミッションのために選抜されたバックアップクルーは以下の通りです。

船長候補: エフゲニー・フルノフ氏（ソビエト連邦）。
リサーチ宇宙飛行士候補: ホセ・ロペス・ファルコン氏（キューバ）。

宇宙船の技術的側面

ソユーズ38号宇宙船自体の技術的諸元も記録されています。この宇宙船の総質量は約6,800キログラムでした。地球周回軌道におけるそのパラメータは以下の通りです。

質量: 6,800kg
近地点高度: 198.1キロメートル
遠地点高度: 287キロメートル
軌道傾斜角: 51.63度
* 軌道周期: 88.194分

これらの軌道パラメータは、サリュート6号宇宙ステーションへのランデブーとドッキングに適した軌道投入が行われたことを示しています。

サリュート6号とのドッキングシークエンス

ソユーズ38号のミッションにおける最も重要な局面の一つが、軌道上のステーション「サリュート6号」へのドッキング操作でした。このドッキングは、地球の夜間の時間帯を選んで実行されました。

ソユーズ38号がサリュート6号へ接近する過程で、搭乗員は暗闇の中で一つの光源を視覚的に捉えました。これは、当時サリュート6号に既にドッキングしていたソユーズ35号から発せられる「ヘッドライト」のような光であったと報告されています。サリュート6号内部に滞在していた宇宙飛行士のリューミン氏は、接近してくるソユーズ38号がメインエンジンを点火し、最終的な位置調整を行う操縦の様子をフィルムに記録していました。

こうした遠隔からの観測と、ソユーズ38号搭乗員の巧みな操作により、キューバ初の宇宙飛行士であるアルナルド・タマヨ・メンデス氏と船長のユーリ・ロマネンコ氏は、サリュート6号へのドッキングを完全に成功させました。このドッキングの成功をもって、ソユーズ38号のミッションは重要な節目を迎え、ステーション内での共同活動へと移行しました。

ミッションの意義

ソユーズ38号の飛行は、単なる技術的な成功に留まらず、政治的、国際的な意義も有していました。インターコスモス計画の下で実施されたこのミッションは、ソビエト連邦が友好国との間で宇宙開発の成果を共有し、宇宙における国際協力を推進する姿勢を示すものでした。特に、社会主義国でありながら旧宗主国スペインや米国との歴史的な関係も持つキューバから、初の宇宙飛行士を誕生させたことは、ソビエト連邦の影響力を示し、キューバ国民にとっても大きな誇りとなる出来事でした。

サリュート6号での活動は、ソユーズ38号の乗組員とステーションの長期滞在クルーとの共同作業によって行われました。様々な科学実験、地球観測、技術試験が実施されたと考えられます。ドッキング時のリューミン氏による記録も、ミッションの貴重な証拠として残されました。

このミッションは、宇宙開発の歴史において、キューバが初めて有人宇宙飛行に参加した画期的な出来事として記憶されています。ソユーズ38号とサリュート6号の組み合わせによる宇宙活動は、国際宇宙協力の新たな一歩を示し、後の宇宙ステーション計画にも繋がる重要な経験を提供しました。ロマネンコ船長とメンデス飛行士の成功は、宇宙への扉がより多くの国々に開かれつつあることを世界に示しました。

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