ソユーズMS-23

ソユーズMS-23：緊急事態への対応と国際協力

ソユーズMS-23は、予期せぬ事態に対応するために打ち上げられた無人宇宙船です。その背景には、ソユーズMS-22で発生した冷却システムの故障がありました。

冷却システム故障と緊急対応

2022年、ソユーズMS-22の冷却装置に微小隕石が衝突し、直径0.8mmの穴が開きました。この事態を受け、ソユーズMS-22の安全性が懸念されるようになったのです。そこで、ロシアの宇宙機関ロスコスモスは、ソユーズMS-22を無人で地球に帰還させることを決定。代わりに、ソユーズMS-23を無人で国際宇宙ステーション（ISS）へ送り込むという異例の措置を取りました。

この対応は、過去のソユーズ32号の無人帰還、ソユーズ34号の無人打ち上げという事例を参考にしています。MS-23は無人ながらも、プログレス補給船と同様に与圧区画に430kgの補給品を搭載し、ISSへ輸送しました。

クルーの安全確保

MS-23がISSに到着するまでの間、緊急時にはスペースX Crew-5がMS-22のクルーを地球に帰還させるオプションとして検討されました。スペースXのクルードラゴンは、当初7名同時搭乗を想定して設計されており、その余裕が緊急時の対応を可能にしたのです。

ISSのミッション管理チームは、NASAの宇宙飛行士フランシスコ・ルビオの座席内張を、ソユーズMS-22からクルードラゴン・エンデュランスへ変更しました。これは、万が一ルビオが緊急避難を余儀なくされた場合に、クルードラゴンを救命ボートとして機能させるための措置でした。座席内張の移動作業は2023年1月17日に行われ、設置と設定にはほぼ一日を費やしました。ソユーズ宇宙船とクルードラゴン宇宙船の間で座席内張を交換するという前例のない作業は、クルーの安全を最優先とする姿勢の表れと言えるでしょう。

この変更により、MS-22内部の熱負荷が軽減され、クルー保護能力が向上しました。これにより、非常時にはプロコピエフとペテリンがMS-22で地球に帰還することも可能となりました。スペースX Crew-5の離脱後も、Crew-6宇宙カプセルが緊急避難用として機能するよう設計されています。

2023年2月26日にMS-23がISSに到着すると、ルビオの座席内張はMS-23に移されました。そして、セルゲイ・プロコピエフとドミトリー・ペテリンの座席内張も、3月2日にMS-22からMS-23へ移動され、帰還の準備が整いました。

当初のクルー計画と変更

当初、MS-23には3名のロシア人クルーが搭乗する予定でした。しかし、アメリカ人宇宙飛行士のローラル・オハラが、ソユーズとクルードラゴンのクルー交代システムの一環としてアンドレイ・フェジャーエフと交代しました。このシステムは、ISSにおける両国の存在を保証し、ソユーズまたは商業乗員輸送機が予定外に地上待機となった場合でも、それぞれのシステム維持能力を維持することを目的としています。

ソユーズMS-22の帰還能力が損なわれたことで、当初の有人ミッションは延期され、MS-24ミッションに振り替えられました。

まとめ

ソユーズMS-23の打ち上げは、宇宙における緊急事態への対応能力を示すと同時に、国際協力の重要性を改めて認識させる出来事となりました。クルーの安全を最優先に、臨機応変な対応と協力体制が、宇宙探査の未来を支えていると言えるでしょう。

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