ソユーズT-9

ソユーズT-9

ミッション概要

ソユーズT-9（Союз Т-9 / Soyuz T-9）は、ソ連が実施した宇宙ステーション「サリュート7号」への有人ミッションにおける、記念すべき4回目の飛行です。このミッションは、先行するソユーズT-8でのドッキング失敗という技術的な課題や、ソユーズT-10aで発生した打ち上げ時のロケット事故という、プログラムにとっての重大な困難な状況を乗り越えて実施されました。このような背景を持つソユーズT-9は、ソ連の有人宇宙活動の継続と技術力の維持を示す重要な役割を果たしました。乗組員は、船長としてウラジーミル・リャコフ飛行士（2回目の宇宙飛行）と、フライトエンジニアとしてアレクサンドル・アレクサンドロフ飛行士（初めての宇宙飛行）の2名が搭乗しました。

主要な活動

宇宙ステーション「サリュート7号」に無事到着し、その後部にあるドッキングポート（aft port）に接続されたソユーズT-9の乗組員は、直ちに活動を開始しました。このミッションにおける重要な要素の一つは、既にサリュート7号にドッキングしていた大型補給モジュール「コスモス1443号（TKS-3）」との連携でした。乗組員は「コスモス1443号」へ移乗し、中に積載されていた約3.5トンという大量の物資を宇宙ステーション内部へ運び込む作業に精力的に取り組みました。これらの物資には、ステーションでの長期滞在に必要な食料、水、空気、実験機器、スペアパーツなどが含まれていました。

長期間にわたるステーションでの滞在期間中、乗組員は様々な科学実験や観測、そしてステーションの維持・補修作業を実施しました。地球との通信を維持しつつ、軌道上での生活空間の管理や、日々のタスクをこなしました。

ミッション終盤には、ステーション内で得られた実験結果のサンプルや、使用済みとなった不要なハードウェアなど、合計約350kgの物資を「コスモス1443号」の帰還カプセル部分である「メルクール・カプセル」に詰め込みました。当初は「コスモス1443号」の機能貨物ブロック（FGB）部分がサリュート7号のモジュールとして長期的に結合される可能性も示唆されていましたが、計画は変更され、「コスモス1443号」はサリュート7号から分離されました。切り離された後、「コスモス1443号」から「メルクール・カプセル」が無事分離され、1983年8月23日に地球への軟着陸に成功しました。一方、残されたFGBコンポーネントはそのまま軌道を周回し続け、同年9月19日に大気圏に再突入し、太平洋上に落下しました。

特筆すべき出来事

ソユーズT-9ミッションの期間中、特筆すべき出来事が記録されています。1983年7月27日、サリュート7号の船体にごく小さな物体が衝突しました。この衝突により、船体には直径約4mmのクレーターが形成されました。幸いにも、衝突地点にあった2枚の窓ガラスを完全に貫通するまでには至らず、船内の気密が損なわれる事態は避けられました。

衝突した物体の正体については、その性質や発生時期から、「みずがめ座デルタ流星群」に由来する微小隕石（メテオロイド）の一部であった可能性が最も高いと考えられています。しかし、地球軌道上に存在する人工的なスペースデブリ（宇宙ゴミ）の一部であった可能性も完全に否定することはできません。この出来事は、宇宙空間における微小物体との衝突リスクという、現在の宇宙開発においても重要な課題を改めて浮き彫りにする事例となりました。

乗組員

メインクルー:

ウラジーミル・リャコフ（Владимир Ляхов） - 船長 (今回が2回目の宇宙飛行)
アレクサンドル・アレクサンドロフ（Александр Александров） - フライトエンジニア (今回が初めての宇宙飛行)

バックアップクルー:

ウラジーミル・チトフ（Владимир Титов） - 船長
ゲンナジー・ストレカロフ（Геннадий Стрекалов） - フライトエンジニア

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